【今どきのごっこ遊び】
皆さんこんにちは。
ボーっとしていたら1月の更新を失念してしまい、慌ててパソコンと向かい合っている浅井です。
今日は、先日あった面白いエピソードを皆さんにお伝えしたいと思います。
私が主にかかわらせていただいているゆり組さんでは、一年を通して男の子を中心に、スマホを作る制作が行われてきました。ずっと盛んに行われている遊びというよりも、一時盛り上がって、しばらくすると下火になって、また気が付くと盛んになってという具合に楽しんできました。
厚紙や白い紙を長方形にカットしたり折ったりして、そこに自分たちの知っているアプリを描いていく遊びです。作ることを楽しむ子や作った後にお友達と見せ合ったり電話をして楽しんだりする子、たくさん作りたい子やアプリの種類を熱心に考える子などそれぞれの楽しみ方があるようです。
話は変わりますがつい先日、昼食後に女の子たちがケーキ屋さんごっこを始めました。
積み木を並べてお店や椅子、机を作り、お皿やコップをおいて、ちょっとした制作でケーキを作ったらケーキ屋さんの始まりです。ケーキ屋さんが開店するとクラスの子たちが興味をもって見に行ったり、ケーキを買いに行ったりします。
私もおもむろにケーキ屋に行き、「すみません、ケーキをください」と声を掛けました。すると「なんのケーキにしますか?」と店員さんに尋ねられましたので、「ショートケーキを1つください」と返答をしました。その時、「お金を忘れた」と思った私は、急いで制作コーナーに行き、お金を作って店員さんに手渡しました。お金を受け取った店員さんは「少しお待ちくださーい」と言ってお金を受け取ってくれました。
ふと隣を見ると、スマホを持った男の子が二人並んで座っていました。「ケーキ買ったの?」と私が尋ねると「うん」と男の子たちは答えました。私がすかさず「お金払った?」と聞くと「うん、paypay(ペイペイ)で払ったー。スマホ持ってるもんねー」と手作りのスマホを見せてくれました。私はその子どもたちの姿に衝撃を受けるとともに、paypayが未だ使えない私は、子どもたちよりも遅れていることを実感しました。
すぐに店員さんがケーキを持ってきてくれましたが、その際、男の子たちが店員さんに「僕たちお金払ったよね」と確認し、店員さんも「うん!」と笑顔で答えていたことからすると、キャッシュレス化が進んでいるなと感じざるを得ませんでしたね(笑)。
さて、皆さんはどう思われましたでしょうか?
ごっこ遊びというのは、「ままごと」=【真似事】と言われるように、子どもたちの目の間にいる大人を模した遊びになります。そのため、地域や時代によっても、子どもたちのごっこ遊びは移り変わってきました。
ままごとからお父さんの姿がなくなり、代わりにペットや赤ちゃん役が増え、いつしかペット以外にもポケモンが家族の一員となり、ママすらもままごとから姿が消え始めていると言われて久しいように感じますが、次に現金がなくなるとは思ってもいませんでした。
長年保育現場にいらっしゃる先生からすれば「そんなのずっと前からよ」と言われてしまうかもしれませんが、現場1年目の私からするとなかなかの衝撃が走る出来事でした。
というのも、室内での遊びをする際は、いくつかの遊びがお部屋の中で始まります。室内は園庭に比べ狭いですので、年長さんともなると場所の問題や自分のしていない遊びへの興味などが重なって、遊びと遊びとが繋がっていくことがあります。例えば、家族ごっこをしていた子たちが、寿司屋さんをしている子たちのところに食べに行って食事をして返ってくるとか、家族ごっこをしていた子たちのところに、制作でお花を作った子がお花を届けてくれて、家族ごっこをしている子が「あと5個ください」とお花屋さんに注文したりします。
こうして、自分たちの遊びを繋げ、自分たちの遊びをより面白くしていくわけですね。
子どもたちからすれば、「楽しい」からしていることですが、我々から見ればこれは社会の縮図であり、社会に適応する能力を自分たちで磨いていると捉えられます。
そのため、「お金」というものは不可欠であり、年長になるにつれ保育者はより現実味を帯びたごっこ遊びになるよう援助します。今回私がお金を急遽準備したのもそのような理由があるからです。
それをもとに、これからのごっこ遊びをどのように捉えたらよいのでしょうか。
キャッシュレスは大人にとっては良いことですが、ままごともキャッシュレス化になれば、そもそもの社会の仕組みを知らないまま、労働の対価としてのお金の意義を体感しないまま、スマホがあれば物が買えると認識して育ってしまうかもしれません。よく携帯型ゲームやスマホゲームで【親のクレジットカードをつかって課金した】なんてニュースがありますが、その理由としてはお金の価値を感じられていないからというのもあるのではないでしょうか。そのように考えると、お客さんはお金を準備する、それと交換でお店屋さんは商品を提供する、この過程をごっこ遊びを通して子どもたちに感じてほしいと思うわけであり、これが遊びを通した教育の一部であると思うのです。
しかしながら、ごっこ遊びは、大人の社会を映す鏡の側面もあると思いますので、子どもたちがスマホでお買い物をするのも必然かと思います。
では、これからどのように遊びを援助してあげたらよいのでしょうか?
お金を作って、銀行も設置して振り込みをしてからスマホを使ったらよいのでしょうか?(笑)
でも、今どきは給料も振り込みだから銀行もいかないですよね?
紙で作ったスマホに、作ったお金を入れるスペースを作って入れておきましょうか?
色々と発想してみますが、どれもピンとこないのが現状です。どのように援助していくか、また考えていきたいと思いますが、やっぱり、「物を買うためにはお金が必要だよね、だからお金を自分たちで作るしかないね」という子どもたちの発想を出発点として、「お金も紙と丸いのがあっていろいろな数字が書いてあるよ」、「数字が大きい方がいいってお兄ちゃんから聞いたよ」、「これだけのお金じゃケーキ買えないかも」といろいろと考える過程を大切にしていき、数字に親しむだけでなく社会の構造を疑似的に体験することが幼児期には必要だと思っています。
これからは、お店でお金を払うこともしなくて済む時代が来るかもしれません。ですが、変わりつつある社会の中で、変わらないことを子どもたちが自分たちで学べる環境を整えていきたいですね。
愛隣幼稚園 浅井 広