【いよいよ運動会】

【いよいよ運動会】

 

 皆さんこんにちは。

 秋の訪れを感じる今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。

 秋といえば、食欲の秋、読書の秋、運動の秋と言われますが、今年はコロナの影響もありますので、どのような秋になるのでしょうか。

 さて、幼稚園での秋と言えば、やはり運動会になるかと思います。他にも楽しいイベントがたくさんありますが、運動会はちょっと特別ですよね。今回は、運動会に先生たちがどのような願いをもっているのかをご紹介できればと思っています。

 

 今年の運動会も学年ごとで行われることが決まり、先生たちはお子さんたちにどのような願いを込めながら保育を進めていくか考えてきました。

まずは、種目決めです。偉そうにも私が「運動会」ついてちょっとお話をさせていただき、各学年で種目を決めましたが、私から先生たちにお願いしたことは「憧れ」という理由で種目を決めないということです。

 どういうことかと言いますと、年中、年長児はこれまでのお兄さんお姉さんの運動会を見ていますので、「自分もやりたい」「お兄さんお姉さんのようになりたい」「年長さんになったらこんなのできるんだ」という気持ちを抱いています。その気持ちを大切にするためにも、運動会の種目が変わらないことはどの園でもよくあります。

 しかし、それは一方で、子どもの本当にしたいことや子どもの成長を保育者が捉えていないということにも繋がりかねません。また、「これをしなければならない」という発想だと、それに向けて子どもたちを指導することにもなります。そしてそこには往々にして無理が生じます。この無理を埋めるために保育者も子どもたちも、それはそれは大変な努力をしなければなりません。でもそれって必要ですか?誰のための運動会ですか?と思うわけです。

 そのため、たとえ話し合いの結果、昨年と同じ種目になったとしても「去年もそうだったから」「それがこの園の文化だから」という理由ではならないと考えたのです。そうした提案のもと、先生たちは種目をいくつか考えてくださいました。昨年と同じ種目もありましたし、子どもたちと種目を決めたいという気持ちもあって決まらない部分もありましたが、各学年ある程度方向性が決まりました。

 

 それから約1か月、園庭では学年関係なく入り混じってリレーをして遊ぶ子どもたちの姿や、ダンスを踊る子どもたちの姿も見られるようになってきました。年中さんには自分たちで考えたダンスを「お家でママと練習してるよ」と嬉しそうに教えてくれる子もいて、運動会を子どもたちも楽しみにしている雰囲気が伝わってくるようになりました。

 そのような中、運動会自体や決定した種目に関して、もっと保育者の“願い”を込めていこうということで、先生たちの話し合いがもたれました。各学年の先生たちで話し合って、全員で共有して、みんなで子どもたちを支えようということですね。

 

 話し合いの結果、年少さんは、まずは初めての運動会を楽しんでほしいという願いがあがりました。【みんなで楽しむ経験】を通して【一人じゃない安心感】を感じてほしいようですね。この願いはとっても大切ですよね。運動会はいつもと違う環境なので、緊張して泣いてしまう子や動けなくなってしまう子もいます。でも、人生最初の運動会、これから十何回は経験するであろう運動会ですので、運動会が楽しいものだと思ってほしい、みんなで活動することがこんなにも楽しいんだと思ってほしい、そういう願いはとても素敵だと思います。

 それから、「応援する経験」もしてほしいということでした。私も「なるほどなぁ~」と思いましたが、確かに年少さんはたいてい応援される側になります。その経験も大事ですが、お友だちの頑張っている姿を「がんばれ~!!」と応援して、そのお友だちから自分も「がんばって~!」と応援される喜びをお互いに感じることは、子どもたちの成長やお友だち関係をより育むでしょうね。さらに、運動会後の園生活においても頑張っている子の応援をできるように繋げていきたいとのことでした。その願いもとても素敵だなと感じました。

 

 次に年中さんです。年中さんは一年前の経験があります。楽しかったと思っている子もいるでしょうし、みんなの前で競技をすることが恥ずかしいと思い始める子もいるかもしれません。羞恥心が湧くというのも成長ですね。そうした成長も踏まえ、年中さんには運動会を通して「自分に自信をもってほしい」という願いがたてられました。道具も自分たちで作り、女の子はダンスも考えました。自分たちで作り上げてきたという気持ちを抱いて、みんながいるから頑張れる、そして一人でも頑張れる、そんな経験を通じて成長してほしいと先生たちは願っているわけですね。

 また、運動会を通じて協力すること、ルールを守った方が楽しく遊べるということを感じてほしいということです。これも大事な願いです。勝ちたいからルールを破る、ずるをするというのは悪い育ちではありません。でも、ルールを破れば遊びや競技自体が崩れてしまいます。その結果、他の子たちは「やりたくない」「面白くない」となりかねませんし、ルールという制約を敢えて設けるのは遊びを楽しくするためでもあります。そのことにも気付き、協力しながらルールを守って運動会を楽しもうという先生の思いは大切ですね。

 

 最後に年長さんです。年長さんの願いは、みんなが楽しめる運動会をみんなで作るということです。一人ひとりが楽しむことはもちろんですが、時に困っている子がいたらお手伝いをしてその子も楽しめるようにする、そしてご家庭の皆さまにも楽しんでもらえるような運動会を目指しています。その中で、自分がクラスの一員であることを認識しながらお友だちへの仲間意識を育み、自分たちでできたという自信を一層育ててほしいと願っています。

 また、年長さんに関しては今の身体能力を生かして自分なりに競技のコツを掴んだり、教えあったり、作戦を立てて勝てる方法をさぐってほしいという願いもあります。年長さんになった今、ダイナミックに体を動かして、かつ勝ち負けにもこだわりをもってお友だちと競争することも楽しいと感じてほしいわけですね。

 

 このように見ていくと、年少さん、年中さん、年長さんと子どもたちの経験や成長が繋がっていることがわかりますね。年少さんの経験がなければ年中さんの願いは立てられませんし、年中さんの願いがなければ年長さんの姿はありません。そして運動会が終わったら、また成長した子どもたちがまた遊びを発展させていくでしょうし、その中でお友だち関係が変わったり、心身の成長がなされることでしょう。どんな姿が見られるのか楽しみですね。

 当たり前のことですが、運動会も保育の一環です。ですので、運動会という行事やその期間を通じてどのように子どもたちが育っていくか保育者は考えなければなりません。ただ、今回深め合ったのは、あくまでも先生たちの“願い”です。この願いをもって私たちは援助していきますが、子どもたちがどのように成長していくかは誰にもわかりませんし、違った楽しみや感情を得る子もいるでしょう。それはそれでよいのです。その得た経験をもとに子どもの成長を支えていけばよいのですからね。

 

 ということで、運動会について先生たちがどのような願いをもっているのかを簡単にですがご説明させていただきました。紙面上、説明しきれていない部分もありますが、何となく思いが伝わったらうれしいです。

 今年もコロナ禍ではありますが、子どもたちがどのような運動会を作り上げ、どのような姿を見せてくれるのかとても楽しみですね。

 

 

浅井 広