【スモールステップで】

 【スモールステップで】

 

 皆さんこんにちは。

 梅雨の時期となりましたね。曇りの日もありますが気温も高くなり、晴れた日は水遊びを楽しむ子どもたちの姿も多くみられるようになりました。たくさん水をかけてほしい子や顔に水がかかるのを嫌がる子、砂場で水を使った遊びを楽しむ子など、それぞれの楽しみ方でこの季節の遊びを楽しんでくれています。

 

 さて、今回は子どもへの援助について触れていきたいと思います。子育てにおいても、保育においても、大人の意図や思いとは異なる行動を子どもたちはとるものです。お片付けをしてほしいのになかなかしてくれないとか、お店の商品を触らないように伝えているのに触ってしまうとか、「やめてよぉ」と思う時もあるかと思います。なかなか大人の思い通りの行動をしてくれないとイライラしたり、またかと思ってしまったりすることもあるかもしれませんね。また、「この子、大丈夫かしら?」と不安に感じてしまうこともあるでしょう。

 そのように思う理由の1つは、大人が望ましいと思う人物像・子ども像に目の前の子どもが一致していないからだと考えられます。要は期待通りの行動をしてくれなかったということです。ということで、今回は2つほど私からご提案したいと思います。

 

 1つ目は大人の子どもに対する期待値を緩めるということです。

 『社会契約論』で有名なルソーは、中世ヨーロッパにおいて身体が小さいだけで精神、思考等は大人とかわらないものとして扱われていた子どもたちには、実は子ども特有の成長があって大人とは肉体、精神、思考等が異なるということを唱えました。これを私たちは「子どもの発見」と呼んでいます。

 現代において、大人と子どもが身体も精神も思考も異なるということは、多くの方がわかっていらっしゃることです。しかしながら、時に私たち大人は、子どもたちに大人のような振る舞いを求め、大人と子どもが違うということを忘れてしまいます。

 例えば、ファミリーレストランでは少々話し声が大きくなったり、食事のマナーが乱れていてもそれほど気に止まらないかもしれません。しかし、お誕生日で高級レストランに行ったとき、同様の振る舞いをしたとしたら、大人は子どもに注意をし、大人自身もストレスを感じてしまうことでしょう。ですが、子どもたちからしてみれば、いつもは許される振る舞いが高級レストランでは許されない理由がわかりません。もちろん、その場の雰囲気を読み取ったり、予め「〇〇はしてはダメよ」という助言をまもったりする子もいます。ですが、年齢が低い子ほど、雰囲気を読み取ることが難しかったり、読み取っても集中が切れてしまったりするものです。そのため、初めから大人が望む100点満点の姿を期待するのではなく、70点くらいの姿を予想しておくとよいと思います。そのうえで、これだけは守ってほしいということを子どもたちとお約束すると、子どもたちはその約束を守れるかもしれませんね。

 おうちにいる時もスーパーに行ったときも、公園で遊んでいる時でさえも、「こうした方がいい」「こうなってほしい」という大人の考え方を100%伝え、期待しすぎるのではなく、子どもたちに合わせて子どもの成長を応援してあげると良いですね。

 あっ、ちなみにですが、レストランの話は例え話ですので、ファミリーレストランで騒いでいいわけと言っているわけではないですよ。

 

 2つ目は、スモールステップを意識するということです。

 1つ目とも重なりますが、本当は100点満点を期待していても70点くらいの姿を想像して、子どもが70点取れたのであれば存分にほめてあげ成功体験を重ねるのです。それが60点でも、50点でも、60点、50点できているのですから、できているところを認めてあげます。

 例えばお片付けをする際、「ご飯ができたから、今から全部片づけてね」と100点満点の声をかけても、子どもからすれば「今いいところなのに」「まだ遊びたいのに」「これ全部やるの?」という気持ちがあるでしょう。なので、「それが終わったら片付けようね」とか「ここだけ片付けてね」と少し期待値を緩めてお話します。

 幼稚園でも片付けの際は、子どもたちに「時計の長い針が“6”になったらお片付けするよ」とか「10個お片付けしよう」とか「それを作ったらお片付け始めようね」と声をかけて、2回目は「そろそろお片付け始めるよ」、「何個お片付けできた?」「素敵なの作れた?」と話しています。そうすると子どもたちは「いまからするよ」とか、「6個できたよ」とか、「こんなのできたよ」と答えてくれるので、「お片付け頑張ってね」とか、「6個もできたのすごいね」とか、「素敵なのできたね」と良いところを褒めるようにしています。

 そのうえで、もう少し頑張ってほしいところがあれば、「楽しく遊べたね、でもみんなが何をしてるかも見てみてね」とか、「じゃあ一緒にあと4個お片付けしようか」とか、「こんなに素敵なのが作れる○○くんなら、お片付けもかっこよくできるね」と促しています。もちろん、必ずしも毎回保育者の思いが伝わるわけではありませんが、毎日のことなので、子どもたちができたことを褒めて、成功体験を重ねることで少しずつ色々なことに気付けるようにしています。そうすると、ふと気づいた時には、きっと色々なことを自分なりにできるようになっていますね。

 

 かわいい我が子のことですので、期待するのは当然のことです。でも、子どもの成長を急ぎすぎると、大人や子ども自身に負荷をかけてしまう可能性もあります。子どもたちの人生は始まったばかりですし、毎日着実に成長しています。子どもの成長に期待しながらも、小さな成長を大人も喜び、温かく見守ってあげたいですね。