【気になる子に対する思い】

【気になる子に対する思い】

 

 皆さん、こんにちは。

 新たな一年が始まりましたね。今年は少しコロナが落ち着いて、これまでの生活に戻ってくれることを期待する限りです。

 

 さて、今回は「気になる子」と呼ばれる子どもたちについてお話しさせていただこうと思います。

 昨今は医学が進歩し、様々な病気や障がいが明らかになってきて、そうした人たちの支援についても研究が進んでまいりました。その一方で病気や障がいの種類は増える一方となり、一昔前なら「おもしろい子よね」とおおらかに捉えられていた大人の認識も変化してきたのではないでしょうか。

 こうした傾向を否定しているわけではありませんし、医学や研究が進歩した結果、たくさんの困り感をいただいていた子どもたちが、より専門的な支援を受けられることは、その子だけでなくご家族、そして社会全体にとって有益なことです。

 一方で、幼稚園や保育園、学校という場所においては、障がいを抱えていないが気になる言動が多い、もしくは障がいを抱えているかもしれないが分かっていない子ども、いわゆる「気になる子」や「グレーゾーン」と呼ばれる子どもがいます。

 誤解を招かないために言いますと、保育者や教師にとって「気にならない子」はいません。どの子どものことも真剣に思っていますので、全員が「気になる子」です。しかし、保育者や教師は集団を相手にしなければならない関係上、どうしてもその年齢に沿った平均的な言動を子どもたちに求めてしまいます。いうなれば、保育者や教師が経験的に築いてきた、「これくらいの育ちだろう」という認識から逸脱する言動が続く子どものことを「あれっ?」と思うようになり、特に「気になる子」という意識を持ち始めるのです。簡単に言えば、すぐにかんしゃくを起こす、集団行動が苦手、言葉よりも手が出てしまう等の保育者や教師の期待する言動に沿わない姿が継続的に見られる子どもに対して、特に「気になる」という意識を持ちやすくなります。

 しかしながら、この認識は大人が作り上げた認識であるとともに、子どもたちの一時的な言動をもとに認識している可能性があることを忘れてはなりません。

 つまり、例えばベテランの保育者や教師からすれば大したことではないことでも、新人の先生からしたら「気になる子」になる可能性もありますし、現状は気になる言動をとっていたとしても、今後変わる可能性もあれば、変わらない可能性もあるということです。見る人のキャパシティーや先見性にもよるという事ですね。

 

 皆さんも他のお子さんとご自身のお子さんを比べて不安に思われたことがあると思いますし、今もお子さんの成長を期待しつつも、心配されている部分もあるかと存じます。「どうしてうちの子は?」と思われたこともあるでしょう。それが「そういえば昔は」と笑えることもあれば「今は・・・」と不安になられる場合もあると思います。

 

 例え、障がいを抱えていたとしても、そうでないとしても子どもたちは「人」であり、全員がスペシャルな存在です。そしてその子どもたちが、次の世代、社会を築いていきます。

 それならば、大人はどうしたら良いのでしょうか。

 私が思うに、障がいを抱えた子も特に「気になる子」もそうでない子も、みんながそれぞれを認め合って支え合う社会を築けるように育てていくべきだと思うのです。苦手なことも得意なことも認め合って、一人一人の違いを受け入れて、それでも一緒に暮らしていく社会を築いていけるように、その姿を大人がモデルとして見せていくことが大切だと思うのです。

 保育で言うならば、保育者主導で一方的な教授をし、誰の絵が上手いとか、誰の運動神経が良いとかいう評価をするのではなく、誰の絵も素晴らしく、どの子の体の使い方もその子が獲得してきたものであるという評価をするべきだと思います。そして、子どもの主体的な遊びを通して、子どものうちにあるものを更に伸ばそうと援助していくべきなのでしょう。もちろん、上述したように障がいのある子どもには専門的な支援も大切になりますが、「みんな違って、みんな良い」そうした意識で子どもを支えてあげることが、子どもたちみんなに有益な保育をもたらすのではないでしょうか。

 

 

松山東雲短期大学 保育科

講師      浅井 広