【子どもたちの成長】

 【子どもたちの成長】

 

 皆さん、こんにちは。

 いよいよ一年が終わろうとしています。今年はコロナ一色の一年となってしまいましたが、来年以降は少しでもコロナが落ち着き、色々な所に出かけたり、たくさんの人に会えるといいですね。

 今年最後の投稿になりますので、子どもたちの一年の成長について事例を交えながらお話ししたいと思います。いつもは抽象的なお話でしたので、たまには子どももの様子を比較しながら具体的に見ていきたいと思います。皆さんのお子さんも一年を通じて、着実に成長されておりますので、「一年前はこうだったなぁ」とか「来年はこんな風になるのかな」とみていただけると幸いです。

 

〇4歳児 11月

 実習生が担当のクラスで遊んでいるとYくんが「先生、お弁当一緒に食べよう」と言いました。それを聞いていたKちゃんも「一緒に食べよう」と言ったので、2人に「いいよ。一緒に食べよう。」と答えました。その後、遊んでいるとTくんからも「お弁当一緒に食べよう」と誘いに来たので、「YくんとKちゃんと一緒に食べる約束しとるけん、Tくんも一緒に食べる?」と聞くと、首を横に振り「3人は嫌なの」と言いました。すると、それを聞いたYくんとKちゃんがそれぞれ「先生、一緒に食べようね」と言いに来たので、Tくんに「どうする?」と聞くと、「Tくんが先生と一緒に食べるの」と言って拗ねてしまいました。実習生はその時どうしたらいいのか分からず困ってしまいましたが、「じゃあ、1日目はYくんとKちゃんと食べて、2日目はTくんと食べるんでいい?」と聞くと、納得してくれた様子でした。

 

〇5歳児 11月

 実習生がK君とY君に外で遊ぼうと誘われて外に行きました。K君が「ケイドロがしたい」と言って、他の集まってきた子どもたちも「やるー」と言い出してケイドロをすることになりました。すると、T君が「ドッジボールがしたかった」と言って拗ねてしまいました。そこに実習生が「今からみんなケイドロするんだって、だからその後みんなでドッジボールしようね」と言うと、「今がいいんよ」といって泣き出してしまいました。それを見た周りの友達が寄ってきて、「ドッジボールは女の子少ないけんできんよ」と、いつも男女でチームを分かれているため、今日は出来ないことをT君に伝えていました。すると、他の子が「男女で分かれるとか、なしでやったらいいやん」と言って、みんなで話し合った結果、男女関係なしのチームに分かれ、先にドッジボールをすることになりました。その後にケイドロもして、みんなで楽しく遊ぶことができました。

 

 上記の事例は、実習生が幼稚園で体験してきた事例です。どちらも思い通りにならなかった子どもの様子が描かれていますが、実習生たちはそのような場面に出くわしても、自分たちなりに考えて対応しています。偉いですね!

 補足ですが、1つの事例では4歳児と5歳児の成長を明言できませんし、今回はこのような事例になりましたが別の機会も同じようになるとは限りません。また、人には成長の個人差がありますので、この事例が4歳児や5歳児の成長過程を示しているわけでもありません。ただ、周りの子どもたちの様子なんかも踏まえて、子どもたちの様子の違いをご紹介していきたいと思います。

 

1:問題解決

 4歳児さんの事例では、実習生と一緒にご飯が食べられないと分かったT君は「3人は嫌なの」、「Tくんが先生と一緒に食べるの」と答えています。そして翌日一緒に食べるという実習生の提案を受けてT君は納得しています。一度、T君に「どうする?」と問い返してみる実習生の声掛けはいいですね。ちなみに、子どもたちのご飯を一緒に食べるというのは、食事の時に隣に座ることを意味することが多いです。向かいや斜め前は一緒とは認められないようですね。

 一方、5歳児さんの事例では、ドッジボールができないことを知ったT君は「今がいいんよ」と言って泣きだしてしまいます。しかし、周りの子どもたちが、ドッジボールができる方法を考案して遊び始めます。そして最後はケイドロをして終わります。

 4歳児さんの事例も5歳児さんの事例もT君が登場しますが、別人です。この2人のT君はどちらも自分の意見が通らず悲しい思いをしています。ただ、周りの人の働きかけによって納得し問題解決がなされるのです。

 4歳児さんの場合は実習生という大人が提案することを受け入れ、5歳児さんの場合は周りの子どもたちの提案を受け入れていますね。5歳児の場合は、みんなで遊びたいという思い、仲間意識が解決に導いたのかもしれません。4歳児さんは、Y君もKちゃんも自分の思いを大切にしています。みんなで食べるということも大切ですが、実習生と一緒に食べたいという強い思いを一生懸命叶えようとしていますね。きっと実習生の提案を聞いたY君やKちゃんも納得し、また、みんなが納得できる方法を学ぶことができたのではないでしょうか。

 

2:相手の思い

 上記の説明の続きにもなりますが、4歳児のY君とKちゃんの発言もおもしろいですね。T君の「3人は嫌なの」という言葉に、Y君とKちゃんはそれぞれ「先生、一緒に食べようね」と発言しています。そりゃ、Y君やKちゃんだって譲れませんから、実習生に念押しするわけです。

 4歳児さんは相手の気持ちのわからないというわけでは決してありません。でも、4歳児の後半ぐらいになって、人は他人から見た自分というのを分かり始めてくるように思います。つまり、それまでは自分の視点から物事を捉えやすいようです。ですので、T君もY君やKちゃんの思いよりも自分の思いを尊重しようとしていますし、Y君やKちゃんも自分の思いを大切にしています。もちろん、自分の思いを大切にすることも人として重要ですし、絶対に譲らないといけないわけではありません。こうした思いのぶつかり合いを通して、相手の気持ちに触れていくということなのです。

 5歳児さんだって、すべてを譲っているわけではないです。ちゃんと最後はケイドロをして、自分たちの思いを叶えています。しかもT君を含めたみんなでです。相手の気持ちを汲み取りつつも、自分たちの思いも叶えていく。ちゃんと社会で生きる力を身に付けていますね。

 

 3:感情のコントロール

 着実に成長している5歳児さんですが、時に思わず感情があふれてしまうことだってあります。今回、T君は悲しい思いをして涙を流してしまいました。別の機会でしたら、涙を流さずに納得したかもしれませんし、初めからみんなとケイドロをして楽しんでいたかもしれません。幼稚園では年長さん、お兄さんお姉さんの5歳児だって思いがあふれてしまうことがあるのです。でも、そんな姿を誰も馬鹿にしません。お友達は心配して、気持ちを尊重してくれます。先生たちもT君の気持ちを受け止め温かく抱きしめてくれます。そうやって支えてくれる人がいるからT君も安心して過ごせますし、別の時はT君が誰かを支えてあげられるのです。

 

 この2つの事例から、他にも4歳児さんと5歳児さんの育ちが分かる部分はあります。普段一緒にいると分かりにくいことですが、こうやって振り返ってみると、幼稚園でちゃんと子ども達が育っていることが良くわかりますね。3歳児の経験が4歳児の成長に繋がり、4歳児の成長が5歳児の姿に繋がるのです。だからこそ、私たち大人は、子どもに早く大人に近づくよう教育するのではなく、子どものその時その時を大切にした教育をしなければならないと思うのです。

 

 皆さんのお子さんは今年一年、どんな成長をされましたか?

 来年はどんな成長を見せてくれるのでしょうね?

 

 来年も子ども達と皆様にとってよい一年になりますように。

 

松山東雲短期大学 保育科

講師      浅井 広