【自分で考え、納得する】

 【自分で考え、納得する】

 

 皆さんこんにちは。

 暑い日が続きますね。コロナの影響もあってか、今年はなんだか感覚がずれておりまして、8月が終わろうとしているのに気持ち的にはまだ8月中旬を過ごしているような錯覚を起こしています。

 

 さて、今回は子どもたちが「自分で考え、納得する」ということについてお話しをさせていただこうかと思います。

 

 園だけでなく、ご家庭においても子どもたちと色々な約束をされることがあると思います。例えば、

・家に帰ったら手洗いうがいをする

・ご飯の前におもちゃを片づける

 などですね。私も子どもの時にゲームをするのは1日1時間という約束をしたような気がしますが、守れたのは最初だけだったような記憶があります。

 

 そんな時、大人からすると「どうして守らないの?」「約束したよね?」と思うこともありますよね。こうした約束をつくって守ることがいわゆる「しつけ」の一環でありますし、子どもたちが生活していくために身に付けてほしい力の1つにもなりますので、大人としては子どもたちに守ってほしい、身に付けてほしいと願うわけです。

 ただ、子どもたちからすると約束を守れる時もあれば、守れない時もありますし、「大人が勝手に決めた約束じゃん」と思うこともきっとあるでしょう。約束を守る、守らないとう結果も大切ですが、守る、守らないに繋がる過程も大切だと思います。つまり、その約束を子どもが本当に納得して決めたかどうかという事です。

 

 子どもたちは大人に比べ、長期的に物事を考えることが苦手というか、発達上難しいところがあります。例えば、「皆のご飯の邪魔になるので、ご飯の前に使っていたものを片付ける」という約束を大人同士がするとしましょう。その時、大人なら片付けないとご飯食べにくいな、でも「仕事が終わらない時もあるよなぁ」とか、「もうちょっとだけ片付けるのを待ってほしい時もあるだろうなぁ」と想像ができるので、「できるだけ」とか「できない時もある」ということを前提に約束をすると思います。

 しかし、子どもたちは大好きなお母さんやお父さんとの約束なので、あまり考えもなく約束を決めてしまうことがあるでしょう。そして、いざその約束を守らないといけなくなった場合、約束をした時と約束を守らなければならない時の心情にギャップがあるので、結果として約束を守れなかったり、嫌々ながらに約束を守ったりすることになってしまうのではないでしょうか。

 

 そのため、子どもが納得して約束を決めることが大切になると思われるのです。特に年中さんや年長さんは自分なりに物事を考えられるようにもなっていきますので、子どもたちが自分で考え、理解したうえで約束をしていきたいですね。

 

 なぜ、そのようにしていきたいかと言いますと、子どもたちには自分で考える大人になってほしいと思っているからです。

 私自身は「今の若い人は」とあまり言ってはいけないと思っていますし、周りの先生方からすれば私も今の若者に該当しますが、ここ10年くらいの大学生は「言われたことはとてもよくできるけど、言われなくとも自主的に取り組んでほしいことに取り組まない」と感じています。あくまでも私的な意見ですが、色々な大学の先生や幼稚園、保育園の先生方からも同じような話を聞きますので、おそらく全国的にそうした傾向が多少なりともあるのではないかと思います。課題を出せば、大半の学生さんはちゃんと期日までに提出しますが、「参考書を読んでおこう」とか、「○○もしておくといいよ」と言ってもほとんどの学生さんはそれに取り組むことはありません。まぁ自分も大学生の時はそうだったなと思うので良いのですが、課されている課題ですら「なぜその課題に取り組んでいるのか」を考えずに取り組んでいる学生さんが多いのです。そのため、「やればいいんでしょ」という思いが強いように思えます。したがって、私たちも課題を課す際は、例えば「この課題は幼稚園実習の~~の時に使用しますので、プリントに△△のように書いて、☆☆までに提出しましょう」という説明をするようにしています。

 

 詳しく説明しなくとも少し考えれば誰の為に課題を課しているのか分かることだと思うのですが、「先生に言われたからしなければいけない」とか「成績にかかわるからしなければ」という気持ちが勝ってしまうようです。そのため、結果として学生さんたちは「やらされている」「しんどい」というマイナス面ばかりが心に残ってしまうようです。さらに、その気持ちが満ちてしまうと課題をやらなくなったり、最悪の場合は夢をあきらめてしまうことにも繋がってしまいます。子どもで言えば「約束を守らない」状態になるわけです。そういう状況にはしたくないので、我々も丁寧に説明をする必要性があります。

 

 私は、こうした現状は学生さんの責任というよりも、教育や社会が重視してきたことの結果だと思っていますので、学生さんの責任ではないと思っています。かといって、教育や社会もより良くなることを目指してきたはずなので、教育や社会の責任でもないでしょう。でも、今後どこを改善したらよいかという話になると、社会は大学で教えるべきと大学を責め、大学は高校、高校は中学となって、結局、幼児教育や家庭をもっとよくしていこうという話になっていきがちです。誰が悪いとは思いませんし、いつの時も大人はみんな子どものことを思い、関わってきたと思います。その結果が目の前の子どもたちなのです。大人の言う事を素直に聞いて行動する子どもを育てたいと思うのであれば、今は成功に近づいていると思いますが、子どもたちに考えて行動してほしいと思うのであれば、誰かがその機会を作らなければなりません。そしてそれは、できるだけ早い時期からの方が子どもたちにとってよいと私は思います。なぜなら、考えて行動するような人間になるためには、一朝一夕では難しいと思うからです。

 

 現代社会は様々な選択肢があるばかりでなく、クリエイティブな発想も求められています。自分で考え、納得し行動できることが、子どもたちの今と将来を、そして社会をより良くしてくれると思います。

 

 

松山東雲短期大学 保育科

講師      浅井 広