【教育現場の現在と今できること】

 【教育現場の現在と今できること】

 

 皆さん、こんにちは。

 松山東雲短期大学保育科で教員をしています、浅井広と言います。本年度も引き続き愛隣幼稚園のホームページに保育や子育てについて書かせていただけることになりました。月に一度更新させていただきますので、よろしければご覧ください。

 

 さて、新型コロナウイルスが世界中で猛威をふるっております。皆様におかれましても、感染されませんよう何卒ご注意くださいませ。

 

 この新型コロナウイルスの影響により、今、学校現場は大きな不安と混乱に陥っています。大学で言いますと、入学式が中止となるだけでなく、オリエンテーションや定期健康診断も延期や中止となっていますし、授業も遠隔授業をせざるを得ない状況です。ただ、遠隔授業と言ってもズームやライン等のコンテンツを使用して中継するものと、YouTube等を使ってアップされた動画を見て行うもの、gmail等を使って課題を提出し添削して返却するものなど様々です。

 社会的には中継をつないでライブで会議をすることが増加しておりますが、大学の授業は一度に100名規模で行われますので、出席も取りずらいですし、そもそもネット環境が整っていない学生などはスマホの制限速度に引っかかって見れなかったりもしますので、ライブ配信には課題が残ります。あとは、シミュレーションした際にも起こりましたが、スマホの機種によってはアプリが作動しないこともありますので、「ネットを使ってライブで・・・」と簡単に言っても問題が山積みなのが現状です。しかもこれは講義科目に限った話なので、演習(主に実技を教授する)科目はより困難が予想されます。今のところ、私はユーチューバーになって授業をしようかと思っていますが、90分は長すぎます・・・。誰が最後まで見るのでしょうか。

 

 また、保育者養成には欠かすことのできない「実習」も今は延期となっています。ニュースでは大学生の行動が問題視されていますが、保育現場も園の保護者の方々も大学生が保育現場に来られることを大変心配させております。もちろん、私たちも心配です。感染させてしまうリスクもありますし、逆に感染してしまうリスクもありますので、多くお大学で実習が延期となりました。ただ、こちらも懸念材料がありまして、このままもし実習ができずにいると、現段階では学生たちは幼稚園免許がとれません。と言いますのも、幼稚園免許を管轄する文部科学省は、大まかに言いますと「実習の日程を秋以降等に再調整し、とりあえずやりなさい。やってみて十分でなかったら大学でその代わりを考えなさい」と言っています。そのため、一度は実習ができなければ単位が取れず、幼稚園免許を取得できないのです。

 仮に文部科学省が実習をしなくても今年はOKとしても、実習ができないまま就職するということは、運転免許証を取るときに今年は仮免許でOKと言っているようなことだと思います。仮免の人が一般道を走って事故を起こしたり、交通違反を起こしても、それはその人と事故を起こされた人と教習所の責任ですと。では、「一年卒業を見送る等の措置を取ったら?」となりそうですが、そうすると保育士不足が大問題となっており、1年間新卒の保育者がいないとなるとそれに拍車がかかって保育現場が崩壊しかねなくなります。

 

 どのようになっても困難な状況が予想されますが、子どもの命、学生の命が最優先ですので、感染リスクがある以上、実習を行うということは賢明ではないでしょう。しかし一方で、教育の質をいかに確保できるか、遠隔授業では学びきれない学びをどう補填していくかということが、私たち保育者養成校の教員に求められています。

 

 では、保育現場はどうなのかということです。先日もある園長先生方と実習の件でお話をさせていただきましたが、保育現場は大学以上に大きな不安を抱えながら保育をしているようです。もちろん、園長先生方個人の見解ですが、市や県から保育をするよう要請されている現状であっても、本音で言えば休園したい、家庭で見られるのであれば今は登園しないでほしいという切実な思いをおうかがいしました。幼稚園や保育園を子育てのリフレッシュとして一時的に利用することも大切でありますし、ご家庭の事情によりどうしても子どもを園に預けないといけない方もいらっしゃいます。特に保育園はそうですね。そのため、休園することが難しいのですが、子どもや保育者が万が一感染する可能性を考えると、本当に保育をして良いのかという葛藤があるとのことでした。感染者がでずに終息することを祈るしかないという園長先生の苦しい心の内が垣間見れました。

 

 一方、保育者の先生方も不安を抱えながら保育をしています。私が教えた卒業生たちは、多くがまだ20代、30代です。感染していても症状がでなかったり、軽症の可能性もあります。そのため、自分も感染しているかもしれないのに保育をしていてよいのだろうかと不安を抱えています。もちろん、検温をしたり、マスクをしたり等のリスク回避はしていますが、もしかしたら自分も感染していて、もっているウイルスが子どもにうつる、もしくは子どもを通して、子どもの家族や祖父母に感染してしまうのではないかと思うと、とても怖いのです。

 しかも保育は濃厚接触をしなければ、できない仕事です。子どもたちに「お友達や先生の近くに来ちゃダメだよ」と言っても継続してそうした行動をとることは難しいでしょうし、喜んでいる子どもたちや泣いている子どもたちに寄り添うのが仕事の1つですので、遠くから「やったね」「大丈夫?」と言っても、その思いは半減してしまうでしょう。こうした葛藤をいただきながらも、また登園してくる子どもたちが日によって異なる中でも、いかに感染するリスクを下げるかを考えながら、でもいつもと変わらないような保育ができるかを模索しているようです。

 

 今、教育現場では今までとは異なった教育の方法が検討されています。その答えはすぐには見つからないでしょうし、何が正しいのかも分かりません。でも、改めて分かったことは、日本の教育が対面での人と人とのかかわりを尊重してきたということです。そして教育は、同じ空間に、同じ時間、同じ人といるからできる営みであるということです。

 

 新型コロナウイルス感染症が一刻も早く終息することを願ってやみませんが、外出もできない、教育機関も機能しにくい機会だからこそ、子どもたちといつも以上に一緒にいる時間を大切にしてみてはいかがでしょうか。長く一緒にいる分、大変なこともあると思いますが、こんなこともできるようになってたんだ、こんなことも言えるようになったんだと、今までは気付きにくかった子どもの成長が分かるかもしれませんね。

 子どもたちは幼稚園や保育園などに通えなくなって寂しい思いをしている反面、ご家族と長い時間を共にできることをとても嬉しく思っていることでしょう。何もできないからこそ、子どもたちと一緒に絵を描いたり、工作をしてみたりして、子どもの世界を一緒に楽しむことも良いかもしれませんね。

 

 

松山東雲短期大学 保育科

講師      浅井 広