【言葉による伝え合い】

【言葉による伝え合い】

 

 皆さん、こんにちは。

 岡崎の冬はお寒いでしょうか?愛媛は寒い日もあれば、3月か4月かなと思うほど暖かい日もあり、なんだか不思議なクリスマスを迎えることとなりました。

 今年も残すところあと僅か。あっという間の一年でした。今年もたくさんのことがありましたが、来年も色々なことが待っているのでしょうね。年長さんは小学生に、年中さん、年少さんはそれぞれお兄さん、お姉さんになって、今以上の成長を見せてくれると思います。子どもたちの少しずつの成長を、側で楽しく見守っていきましょう。

 

 さて、今回は10の姿の中にあります「言葉による伝え合い」について、お話しさせていただきたいと思います。

 

 まずは幼稚園教育要領解説から抜粋したものをご紹介します。

 

 言葉による伝え合い

 先生や友達と心を通わせる中で,絵本や物語などに親しみながら,豊かな言葉や表現を身に付け,経験したことや考えたことなどを言葉で伝えたり,相手の話を注意して聞いたりし,言葉による伝え合いを楽しむようになる。

 

 5歳児の後半くらいには、子どもたちは言葉によって、自分の思いを伝えたり、相手の話を聞いて理解し、言葉によるコミュニケーションを楽しめるようになると10の姿では説明しています。

 コミュニケーションの中にも色々な方法がありますが、「言葉」というコミュニケーションツールは高度なものとして考えられています。子どもたちを見ていれば分かりますが、最初のコミュニケーションは身体接触によるものです。お父さんやお母さんに抱っこされたり、手を握られたり、抱きしめられたりすることにより、言葉を使わなくても「愛されている」ことや「尊いものだと思われている」こと等を肌で感じることができます。その後は、ジェスチャー(身振り手振り)や指差し、表情や喃語(なんご)等、言葉を使わなくても思いを伝えたり、伝えられたりする方法を獲得していきます。そして、言葉というコミュニケーションツールを身につけていくわけです。

 

 ただ、書くのも話すのも含めて「言葉」というものが、使いこなすのが難しいことを皆さんはご存知だと思います。

 一生懸命話しているのに半分しか伝わらなかった、文章になると言いたいことがまとまらない、そういった経験は皆さんもおありだと思います。

 

 そうした「言葉による伝え合い」をどう育てていこうか。私なりに言わせていただきますと、大人の援助として4つのポイントがあるかと思います。きっともっとあると思いますが、3つご説名させていただきます。

 

・子どもの成長を子どもの「言葉」から感じる

 子どもたちは年齢や個々の成長により、言葉の使い方が異なります。以前にも書かせていただきましたが、人の発達としての言葉の獲得はある程度プロセスが決まっています。毎日子どもを見ているとなかなか気づきにくいのが成長ですが、「いつ、そんな言葉を覚えたの?」と驚く時や大人からすると悪く育ってしまっているのではないかと思う時があります。子どもには似合わない難しい言葉を使ったり、嘘をついたり、人を傷つけるような言葉を使ったり、、、大人からすれば「どうしてだろう、いつの間に?」と思うわけです。

 子どもがそうした言葉を使う理由は、それぞれ異なりますが、子どもに似合わない難しい言葉を使うのは大人に憧れていたり、お兄さんお姉さんになりたい気持ちが育っているからかもしれません。嘘をつくのは相手の気持ちが分かり、嘘をつかなかったらその後どうなるかを予測できるようになってきているからではないでしょうか。人を傷つける言葉を使うのは、叩いたりせずに、相手に最もダメージを与える方法を学んだからでしょう。これらの言葉が良いものかどうかは別として、子どもたちは育っているから様々な言葉によるコミュニケーションが取れるようになっています。悪い言葉は正しい言葉に置き換えてあげればよいのです。ですが、その基として、子どもたちが育っていることを大人が受け止め、喜び、理解することが大切だと思います。

 

・子どもが話しやすい環境を整える

 子どもたちは、日々、たくさんの思いを伝えてくれます。たくさん伝えたいのですが、必ずしも上手く伝えられるとは限りません。大人がどれだけ待って子どもの話を聞くことができるか、もしくは子どもの思いを引き出せることができるか、ということが大切になってくることでしょう。自分の話を聞いてもらえた、自分の話した内容が伝わった、皆が楽しんでくれたという経験は、子どもたちの中で成功体験として積み重なっていきます。その成功体験は自信となり、子どもたちを支える柱となります。こうした思いができる環境をつくることが、子どもの言葉によるコミュニケーションには不可欠になっていくことでしょう。

 

・伝えたくなる経験

 「表現する」ということにおいて、その動機は欠かすことができません。絵を描く、歌を歌う、文字を書く、会話をする、そうした表現の土台には表現したい内容、経験、感情があるのです。言葉による伝え合いの場合、“伝えたい”ことがなければ、伝え合いはできません。ですので、大人は子どもが心動かすような経験ができるようにするのです。それは大きなイベントでないといけないわけではありません。散歩に行ったり、園内で友達や保育者と遊んだり、スーパーに買い物に行くことだって子どもたちにとっては大切な経験です。さらに、ちょっとしたエッセンスが加わるともっと心動かす経験になるかもしれないですね。

 スーパーで見た魚がとても大きくて、お家に帰ってからお父さんと一緒に魚の名前を調べたとか、友達と遊んでいた時に保育者から「二人は仲良しだね」と言われたとか、子どもによって感動するポイントは異なると思いますが、そうした経験を豊富にできることが言葉にも繋がってくることでしょう。

 

・言葉の必要性を感じる

 思っていることを伝えたいと思うこと、相手のことをもっとわかるためには言葉が必要だということを感じることが大切ですね。身体接触やジェスチャーでは、詳細に相手のことを理解することは難しいですが、言葉でならより複雑なことも理解することが可能になります。「〇〇ちゃんと喧嘩しちゃった、でも大好きだから謝って一緒に遊びたい、でも〇〇ちゃんだっていけないことしたから、ごめんねしてほしい」こうした複雑な気持ちってありますよね。

 言葉の必要性を感じ、困っている時こそ、その子が言葉に興味を持っている時なのかもしれません。その時に「〇〇って言ってみたら?」とか、「一緒に謝りに行くから自分の気持ちを伝えてみる?」と背中を押してくれる人がいたらどれだけ心強いことでしょう。思い切って自分の気持ちを伝え、相手の言葉もきっと聞くはずです。このような援助と子どもが言葉を必要だと思うことが、言葉の育ちには必要なのです。

 

 上記のような4つのポイントを大切にしながら、子どもとの会話を大切にしていくと子どもたちもきっと「言葉」を身につけ、大切にしていくのではないでしょうか。お気づきだと思いますが「言葉」というものは、子どもたちの人間関係にも大きな影響を与えるものです。そして、ヒトとして社会で生きていくために、言葉は外すことのできないコミュニケーションツールとなっていきます。子どもたちが言葉による伝え合いを楽しめるようになるためには、大人の役割は大きいのかもしれませんので、皆さんも子どもたちと楽しく、たくさん会話をしてみてください。

 

 今年も一年、お付き合いいただきありがとうございました。また来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

 皆様、よいお年をお迎えください。

 

 松山東雲短期大学 保育科

 講師      浅井 広