【数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚】

【数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚】

 

 皆さん、こんにちは。

 いよいよ冬が到来し、しんしんとした寒さが身にしみる季節となってきました。

 愛媛では「みかん」の収穫が本格的に始まり、冬の訪れを感じさせてくれています。色々な種類のみかんが愛媛にはあり、少しずつ異なった味わいを楽しむことができます。三ケ日みかんや蒲郡みかんといった「みかん」の種類しか知らなかった私は、愛媛に来た当初はその種類の多さに大変驚いたものでした。

 皆さんもよろしければお取り寄せしてみてください。値段は高いですが、おススメは「姫マドンナ」です。

 

 さて、今回は10の姿の中にあります「数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚」について、お話しさせていただきたいと思います。

 毎度のことながら、まずは幼稚園教育要領解説の中で、このことについてどのように書かれているかをご紹介いたします。

 

 数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚

 遊びや生活の中で、数量や図形、標識や文字などに親しむ体験を重ねたり、標識や文字の役割に気付いたりし、自らの必要感に基づきこれらを活用し、興味や関心、感覚をもつようになる。

 

 教育要領解説には、数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚は、子どもが環境と関わることを通して育まれるよう「単に正確な知識を獲得することを目的にするのではないことに十分留意する必要がある。」とも書いてあります。つまりは、数量を数えられる、図形や標識が示す意味が分かる、文字が読めたり書けたりすることだけが重要ではないと言っているのです。加えて、「幼児期には豊かな言葉や様々な文字、図形などに関わり、思ったことを安心して話したり、表現する体験を通じて、子どもの関心や感覚を育てることが小学校との接続になる」ことも記されています。

 

 例えば、自分の好きなキャラクターやテレビアニメのタイトルなどは、子どもたちはすぐに覚えてしまいますよね。電車やバスによく乗る子は、文字や漢字の形でどこ行きか判断しています。文字が何か特別の意味をもつ記号であることを3 歳、あるいは2歳の子どもも気づいているのです。ただし、数量や図形、標識や文字は高度なツールです。そのため、使いこなすためには、時間が必要になります。

 では、どのようにして保育の中では数量や図形、標識や文字について、子どもが学んでいけるようにしているのでしょうか。文字を例に考えてみたいと思います。

 

 入園したての3歳児さんにとって、靴箱の自分の名前を見つけるのはとても難しいことです。そこで園では目印のシールを名前(ひらかな)シールの横に貼ったりします。また、同じシールをロッカーにも貼っておいたりします。そうすると、次第に自分のシールと場所が分かるようになって、そこに自分の居場所ができます。それと同じくして、自分が○○組の一員であるという所属意識も生まれてくるのです。

 自分の居場所があって、自分以外にもクラスの仲間がいることが分かってくると、次第に他の子どもに対する興味や関心が湧いてきます。すると、「このシールは○○ちゃんのだ」と視覚的に理解をしていったりします。そして、シールの横にある名前(ひらがな)を見て、「あ、ぼくとおんなじ形があるよ」と文字に対して触れる機会になり、先生に「これ、なんて読むの?」と尋ねたりします。先生が「“り”だよ」と答えてあげると、「りくくんの“り”とりかちゃんの“り”は一緒だね」と文字に関心を抱くきっかけになるのです。このように、3歳という幼い時期から文字に親しむ機会を幼稚園などでは意図的に仕組むのです。

 

 上記以外にも、絵本や紙芝居に触れたり、連絡帳に書いた内容を先生が子どもと一緒に読んだり、歌を歌う際に歌詞を書いたりと、様々な場面で子どもが文字に触れる機会を仕組んでいきます。そして、年長さんのお正月くらいですかね。年賀状を先生やお友達から受け取った子どもたちは、大好き先生やお友達から手紙をもらった嬉しい気持ちでいっぱいになる経験をしたりします。そして、自分も書きたい!という気持ちが強くなる子もいます。そうした気持ちが年明けの郵便屋さんごっこやお手紙の遊びへとつながっていきます。

 

 5歳児でもこの時点で字を正確に書けない子がもちろんいます。それは全然問題ではありません。ただ、子ども自身は書きたい気持ちをもっています。だから子どもの中に必要感が生まれるのです。

 このような子は先生に「こういうことを書きたい」とお願いをして、文字を教えてもらい、ひらがなを自分で学びます。文字が書ける喜びや相手に思いを伝えられる嬉しさを原動力として、文字をどんどん覚えていきます。そして、小学校に入って、正式にひらがなを教わります。

 

 幼児期に大人が無理に教えなくとも、小さい時から文字に関する興味や関心を持てる環境を作っておけば、経験と合わさって、自分が必要な時期に自ら文字を学んでいくのです。当然、最初は上手く書けなかったり、鏡文字になったりしますが、何度もお友達に手紙を書いたりしていくうちに、ひらがなも書けるようになるのです。要は、子どもが学びたいと思う気持ちをどれだけ蓄積させられるかということが重要なのではないでしょうか。そのため、「単に正確な知識を獲得することを目的にするのではないことに十分留意する必要がある。」とも書かれてもいるのだと思います。

 

 今回は文字について書きましたが、数量や図形、標識等も同じようなことが言えます。園の先生方は、子どもたちが普段から様々なものに触れられる仕掛けを園内に仕組んでいます。子どもたちはそこにどのような意図が含まれているかを当然知りませんが、その仕掛けに日頃から触れ、なんとなく理解しています。そして、あるきっかけを契機に、蓄積されてきた経験を活用していくようになります。これが幼児教育なりの“学習方法”なのです。

 

 時折、学生に「私は小さいときにひらがなを習ったのに、〇〇幼稚園ではひらがなを教えないんですか?」と聞かれます。そのような時は、「○○幼稚園では、直接的に書き方を教えることは少ないかもしれないね、でも、子どもたちがひらがなを学びたい、使いたいと思えるための環境はたくさん準備しているよ」と伝えます。そして、「もし、自分(学生)が韓国語を学ぶことになったら、必要だから学びなさいと言われて学ぶのと、自分が学びたいと思って学ぶのどちらが良い?」とも尋ねます。答えは明白です。興味がある時期に学んだ方が身になりますし、楽しいのです。楽しいから、もっと興味が湧いてきて、より高度なものを学ぼうともします。それが、幼児教育から小学校教育に移行するということなのです。

 

 与えられるのでなく、自ら楽しく学ぶことができることが、一番良いですよね。

 

 

松山東雲短期大学 保育科

講師      浅井 広