【社会生活との関わり】

 【社会生活との関わり】

 

 皆さんこんにちは。

 暑い日がまだまだ続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか?こう暑いとエアコンが欠かせなくなりますが、エアコンをつけると地球の温度が上昇して、より一層暑くなってしまうという悪循環。。。どうしたらよいものかと思いながらも、うだるような暑さに負けてしまう今日この頃です。

 

 さて、今回は「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」の中にあります「社会生活との関わり」についてお話していきたいと思います。

 

 社会生活?と思われるかもしれませんが、幼稚園は子ども達にとっては立派な社会です。また、地域の人とかかわったり、地域の人達の仕事を見学させていただいたりするのも、社会で生きていくためにはとても大切になります。そのような「社会生活との関わり」ですが、幼稚園教育要領解説には以下のように書かれています。

 

 「家族を大切にしようとする気持ちを持つとともに、地域の身近な人と触れ合う中で、人との様々な関わり方に気付き、相手の気持ちを考えて関わり、自分が役に立つ喜びを感じ、地域に親しみを持つようになる。また、幼稚園内外の様々な環境に関わる中で、遊びや生活に必要な情報を取り入れ、情報に役立てながら活動するようになるとともに、公共の施設を大切に利用するなどして、社会とのつながりなどを意識するようになる。」

 

 幼稚園生活において、幼児の生活の基盤となっているものは、やはり保護者や保育者、他の子どもたちとの信頼関係にあると考えられています。特に年少の時は、保護者や保育者に見守られているという安心感や安定感が大切になってきます。

 皆さんは「愛情のコップ」という言葉を耳にしたことはありますでしょうか?専門的には心理学の分野なのかもしれませんが、人それぞれに愛情を蓄えるコップの大きさは異なっており、そのコップに愛情が注がれて満たされている人は精神的に豊かな状態にあるという考え方です。更にコップからこぼれる程の愛情を受け取ると、他の人にも愛情を注ぐことができるようになっていくとも考えられています。

 保育で言うと、保護者の方やおじいちゃん、おばあちゃんからもらった愛情に加え、園の保育者やお友達からもたくさんの愛情をもらい、コップが満たされると色々な遊びに興味を持ち始めたり、他の子どもたちにも興味をもってかかわることができるようになっていくということでしょう。

 確かに、たくさんの愛情を注がれて育った子どもたちは、園の中でお友達だけでなく、異年齢児や同じクラスの子、他クラスの子どもたちともかかわっていきます。これは、子どもたちなりの「社会生活との関わり」と言うことができるでしょう。その中で、例えば年少児は自分たちよりも年上の年長児に優しくしてもらったり、時に年長児から仲間はずれにされたりして、年長児への憧れを抱くとともに、自分たちの立ち位置を感じたりしていきます。

 「仲間はずれ」という言葉を使うと嫌な印象を受けられるかと思いますが、子どもたちの社会の中では当然のことです。年長児からすれば、ルールも分からない、足の速さをはじめとした体の使い方も違う、技術にも差があり、イメージの共有も難しい年少児と一緒に遊ぶということは、とても配慮を要することになります。言い換えれば、かなり手加減して、我慢して遊ばないといけなくなるわけです。それでは年長児たちも面白くないわけですね。だから、一緒に遊ぶ時もあれば、仲間に入れない時もあるわけです。でも年少児さんからすれば、「今日は入れてもらえなかった」という不満があるわけで、どうして入れてもらえないのかもよく分からなかったりするので、保育者に助けを求めに行ったりします。でも、ちゃんと保育者はお互いの気持ちが分かっているので、年長児が許容できる範囲で入れてくれてもらえないかお願いする時もありますし、年少児が満足できる別の遊びを一緒にする時もあります。

 こうした子どもたちの社会は、けっこうシビアなのです。上の例でも、保育者が年長児に入れてもらえないかお願いをして年長児が入れてあげたとしても、意外と遊びの最中は年少児のことを相手にしなかったりして、年少児はつまらなくなって遊びから抜け出したりすることもあります。「先生にお願いされたから、一応入れてあげたよっ」といった感じですかね。でも、年長児自身もそういった経験を積み重ねてきましたし、優しくしてもらった経験もたくさんしてきました。だから、年少さんに優しくしてあげたいという気持ちもたくさん持っています。しかし、一方で、自分たちだけで思いっきり遊びたいという気持ちももっています。子どもなりに葛藤を抱き、どうしたらその二つの対となる欲求を満たせるかを考えているのです。

 年少児は年少児で、一緒に遊んでもらえなかったという思いを抱きつつ、その気持ちをどう折り合わせるかを経験していきます。ある時は泣いて保育者にその思いをぶつけることでしょう、またある時は、別の遊びをして気持ちを和ませるでしょう。異年齢児とのかかわりだけでなく、こうしたことは同学年の子どもたちの間でも日常茶飯事に行われています。逆に、他の子どもを自分の遊びに入れてあげないという選択をする時もあるのです。そうやって、様々な気持ちをどのように自分で消化すればよいのか、自分が参加するためにはどのような振る舞いや育ちをすればよいのか、人とかかわるためにどのように考え振舞えばよいのかを、子どもたちなりに学習しているわけです。

 そしてこうした経験や家庭での経験等があわさって、お友達を大切にするとか、仲間意識を持つとか、家族を大切にする、人のために何かをしたいと思う等の気持ちを育んでいくのでしょう。

 これって、ものすごく大事なことではないでしょうか?大人の社会でも、思い通りにいかないことや自制しなければならないこと、自分の力量が不足していると落ち込むことや同僚や先輩、後輩を思いやること等ってたくさんありますよね?でも、自分なりの方法で乗り越えたり、表現したりしていきます。こうしたことは、誰かに教えてもらうことではないのです。自分で経験して、考えて、またいろいろな人から学び取っていくものです。そして、この学習をするのが幼児期なのです。

 大人になっても直ぐにキレるとか、思いが通じないと暴力で思い通りにしようとするという人は、もしかしたら、幼児期にこうした経験があまりできなかったのかなとも思います。もちろん、それだけでないと思いますけどね。でも、幼児教育は、それだけ大切な教育をしているのです。そしてそこには保育者だけでなく、保護者の存在も欠かせません。家庭と園が全く異なる教育をするわけにはいきませんからね。家庭と園で協力して、温かく子どもたちの育ちを見守っていけるとよいですね。

 

 社会生活の中には、地域との関わりや情報の活用についても言及されているのですが、長くなってしまったので、今回はここで終わりたいと思います。またどこかでお話しする機会がありましたら、お話させていただきます。

 最後までご覧いただき、ありがとうございました。

 

 

 

 松山東雲短期大学 保育科

 講師      浅井 広