【健康な心と体】

 【健康な心と体】

 

 皆様、こんにちは。

 段々と気温も上がってまいりまして、愛媛では半袖姿の方が多くなってまいりました。これから梅雨、そして夏と向かっていきますが、季節外れのインフルエンザもでているようですので、ご家族ともどもご自愛くださいませ。

 

 さて、本年度は「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」を解説していきたいと思います。「10の姿」に関する詳細は前回のブログをご覧ください。

 まず、おさらいと致しまして、まず一つ目に、この10の姿は到達目標ではないということを覚えていらっしゃいますでしょうか?人の発達には個人差がありますし、子どもとなればその時々によって見せる姿が違いますので、これから説明させていただく姿が必ず5歳児の終わりまでに“いつでも”見られないといけないとか、“見られない”と発達に遅れがあるとかいうことではないことは覚えておいてください。

 また、10の姿はあくまで幼児期の終わり頃に一般的に見られる姿を言語化したものですので、10の姿に向かって育っていくために様々な活動に取り組まなければならないというものでもありません。例えば、楽器を使って「さんぽ」を弾くことを目標にして、楽譜の読み方等も覚えて一生懸命練習していくという考え方ではなく、楽器に触れ、演奏することが楽しくなり、楽譜等の読み方も教えてもらったりしていった結果、「さんぽ」が弾けるようになったという考え方といった感じでしょうか。「10の姿」も子どもたちの成長も、楽しく遊んだり、他者との生活を共にしていった結果、気づいたら成長した姿が見られるようになったよ、というように捉えると良いと思うのです。ただし、保育者は年少、年中、年長の成長の繋がりを理解し、成長が促進するような援助をしていくことが必要となります。それは直接的な援助と環境を整える間接的な援助に分かれますが、その両方を並行して行っていくのです。

 話は戻りますが、子どもたちのことですので、一つの遊びに途中で飽きる時もあるでしょうし、夢中になって取り組む時もあるでしょう。生活面でも困難に壁に当たることもあるでしょう。上手くいくときも、上手くいかないときもあると思います。そうした子どもたちの姿を支えていくのが保育者やご家族を含めた大人たちの役割となるのです。

 

 では、具体的にはどのような姿が見られるのでしょうか。「10の姿」というわけですから、10項目あるのですが、そのうち、今回は「健康な心と体」について解説していきたいと思います。

 

 〇健康な心と体 

 幼稚園生活の中で,充実感をもって自分のやりたいことに向かって心と体を十分に働かせ,見通しをもって行動し,自ら健康で安全な生活をつくり出すようになる。 

                                                             平成30年幼稚園教育要領より

 

 教育要領には、「健康な心と体」については上記のように書かれています。こうした姿が年長の後半には見られるよ、ということです。

 今は5月ですので、新入園児(年少)さんは、登園時にご家族と離れることが辛くて泣いてしまう子もいますね。しかし、園に慣れ、お友達ができ、先生が自分を受け入れてくれる存在だと分かってくると、次第に登園も楽しみになっていきます。その後はお友達とのトラブルや楽しい思い出を経験し、先生との信頼関係も深くなり、園の中でも安定感や解放感を味わえるようになっていきます。そうした他者との信頼関係の下で,自分のやりたいことに向かって伸び伸びと取り組み、充実感や満足感も感じられるようになるのです。

 そうした感覚を味わいながら、自分の興味関心にあったものやお友達と共に自分のしてみたい遊びを選択し、存分に遊んでいきます。その遊びが楽しかったらどうするでしょうか?もちろん、もう一回、また明日と繰り返し遊びますよね。楽しいとか嬉しいといった感情が、子どもたちの遊びや活動の源になっているわけです。

 

 また、遊びをしいく中で子どもたちはその遊びに目標をもっていくようにもなります。例えば、ドッチボールで「○○先生を当ててやろうぜ!」とか、泥遊びで「皆よりも大きい泥だんご作りたいな」とかです。もちろん、「今日は○○ちゃんと一緒に遊びたいな」「○○君と一緒のチームがいい」という目標も大切な目標です。子どもたちは言わなくとも色々な目標をもって遊んでいるのです。

 そうして、色々な遊びに取り組んだり、繰り返し遊びをしたり、ルール変更をしていく中で、お友達と意見が合わなくて本当は嫌だけとお友達と遊びたいから我慢したり、譲ったりする経験もしますし、譲れないポリシーを自己主張する経験、お友達や年下の子どものために何かをしてあげる思いやりの経験等をたくさんします。そうやって心が育っていくのです。

 

 一方で、体の部分ですが、これは言わずともお分かりだと思います。遊びの中では、体をたくさん使いますよね。皆さんは、複数の子どもたちと一緒に鬼ごっこ等をされたことがありますでしょうか?子どもたちと一緒に鬼ごっこをすると、「子ども全員VS大人」という構図になったりします。大人を捕まえたいという気持ちが子どもたちの中にはあるのですが、その時、子どもたちは無尽蔵に駆け回っています。もう大人の方がへとへとになるくらいに。その他にも、鬼ごっこでタッチをよけるときは体をひねったり、走りながら障害物をよけたりと様々な体の使い方をします。また、鬼ごっこだけでなく、色々な遊びをしていく中で、どのくらいの力で物を投げたら相手に届くのか、今の自分はこの高さから飛び降りれるのか等の安全能力、言い換えれば、自分や他者にとって危険な行為かどうかを判断、制御できるようにもなっていきます。製作をするときなどは、細かな手先の動きが必要になりますが、様々な製作をしていく中で指や手首、手のひらの使い方等も身につけていきます。さらに、たくさん遊んだ後はお腹も減って食欲もでてきますし、疲れたらたくさん寝ることにも繋がり、生活リズムも整っていくものです。

 

 このようにして、5歳の後半になると、気持ちの面だけでなく体も成長し、「さすが、年長さん」というような姿を見せてくれるようになるわけです。また、幼稚園ではある程度、同じような生活を過ごしていきますので、「この後はどうなるかな?」、「あと、どれくらい遊べるかな」といった予測もできるようになり、見通しをもちながら生活することもできるようになっていきます。

 

 おおまかに文章で書いてしまえばこれだけのことですが、実際には約3年かけて上述の成長をしていきます。年少さんの時は年少さんらしい成長を、年中さんの時は年中さんらしい成長をして、年長さんを迎えますので、「10の姿」は年長の後半になると突然現れるものでもないのです。年少さん、年中さん、年長さんの前半と子ども一人ひとりが少しずつ成長して行った結果、「10の姿」が見られるようになるのですね。

 だからこそ、子ども一人ひとりの“今”を大切にしていくことが重要になってくるのです。

 

松山東雲短期大学  保育科

講師       浅井 広