【子どもの遊びにも成長の過程がある?】

 【子どもの遊びにも成長の過程がある?】

 

 皆さんこんにちは。今年の夏は地震があったり、異様な台風が来たり、豪雨が降ったりと、本当にこの先が心配になる様な自然災害が相次ぎました。自然災害に対して現状、私たちはなす術をもっていませんので、「いつか来る」という心構えで備えておくしかありませんね。我が家も防災グッズを見直しておきたいと思います。

 

 さて、今回は子どもの遊びにも過程(プロセス)があることについてお話したいと思います。普通に見れば、子どもの遊びはどれも似たように見えますので、幼稚園などでは子どもたちは「楽しそうに遊んでいる」としか思われないかもしれません。しかし、よくよく観察してみると、「遊び」という子どもたちの活動にも成長(変化)が見られるのです。もちろん一つ一つの遊び自体も年齢や回数を重ねていくと遊び方が変化していくのですが、「遊び」という大きな枠組みでも成長が見られるのです。

 

 まず、子どもが遊び始めた頃に見られる遊び方をご紹介します。遊びの初期段階ともいえるのが「一人遊び」と呼ばれる遊び方です。特徴としては、その名の通り、一人で遊ぶことを楽しんでいるというところです。遊ぶことの楽しさに気付き、黙々と遊びます。「ここはこうして~」、「こうじゃないな~」と自分の世界に入り込んで遊んでいる様子が見られます。見たり体験したりしたことなどを基に、自分の世界で遊び込む大切な遊びです。

「一人遊び」 2~3歳ごろ

・他の子どもと一緒にではなく、一人だけで遊ぶ

・自分自身のイメージの世界に入り込んで遊ぶ

・他の子どもと遊べない場合のひとり遊びもあるが、発達が進んでも見られる

 

 次に紹介する遊び方も「一人遊び」と同じような時期に多く見られる遊び方で、「傍観(ぼうかん)遊び」と言います。傍観的遊びと呼ばれることもありますが、他の子どもが遊んでいる様子などをじーっと眺めて遊ぶ遊び方です。外から見るとぼーっとしているように見えるのですが、実は他の子どもの遊びなどを見て、自分自身も遊んでいるように感じるイメージを使った遊び方です。また、他の子どもへ関心を深める意味合いもあります。

 時に子どもたちは行ったことがないところに自分も行ったことがあるように話したり、したことがないのにしたことがあると言ったりします。大人からすれば単なる「嘘」なのですが、子どもたちからすると、友達から聞いたディズニーランドに自分もイメージの世界で行って遊んだのかもしれません。そのように考えると、行ったことのないディズニーランドに「行ったことがあるよ」と真剣に言うのは、子どもの場合はあながち嘘ではないのかもしれせん。こういう遊び方も子どもたちにはあるのですね。

「傍観遊び」 2~3歳ごろ 

・他の子どもには興味があるが、遊びには参加しない。他の子どもへの関心の芽生え。 

・わきに立って他の子どもが遊んでいる様子を眺めている。他の子どもが遊ぶ様子を見て自分も遊んでいる気持ちをもつ。

 

 「一人遊び」や「傍観遊び」をしながら子どもたちは「平行(並行)遊び」という遊びもします。平行遊びは、他の子どもと同じ場所で同じような遊びをしているのですが、かかわりが少ない遊び方をしている時の遊び方です。例えば公園に行って砂場で遊んでいる時に、知らない子どもも同じように山を作って遊んでいたとしても、2人で協力して山を作るとか、2人が作った山を川で繋げるとか、スコップを順番で使い合うなどのかかわりが少ないことがあります。もちろん人間関係も関係するのですが、幼稚園でも同じようなことが見られます。言い換えるとすれば、同じ場所でお互いに「一人遊び」をしている様な時ですね。直接的なかかわりは少ないのですが、相手の遊びを自分の遊びにこっそり取り入れたり、一緒にいる安心感を味わっていたりします。こうした遊びからもお友達との関係が育まれていったりします。

「平行遊び」 2~3歳でよく見られる

・他の子どものそばで同じ遊びをするが、子ども同士の間には具体的交渉(交流)が少ない状態

・子ども個々がそれぞれの対象と目的を持って遊んでいる

・交流は少ないが、模倣や比較などを通して、互いの遊びに影響を与えている

・一緒にいることの安堵感、安定感を感じている

 

 上述したような遊びを続けていくと、次第に「連合遊び」と呼ばれる遊び方を子どもたちはしていきます。保育施設では、子ども同士の関係よりも子どもと保育者との関係がまずは確立されていくのが一般的で、幼い子どもたちは先生と遊びたいと思うようです。しかし、クラスに先生は1,2人しか大抵はいません。もし先生と一緒にしたい遊びがあったら、1人ではできない遊びがあったら先生を遊びに誘おうとしますが、他の子どもも先生と遊びたいのです。

 こうなったらどうするか。先生と、先生と遊びたい子どもの3人で遊ぶことを考えるわけです。3人で遊ぶとしても自分のしたい遊びもあるので、どうしたら納得のいく遊びができるかを子どもなりに考えるわけです。もちろん話し合ってというのはなかなか難しいので、先生が子どもたち同士の言葉を繋ぎながら皆で考えます。

 

 この時、一人ひとりの子どもに焦点を当てて考えると、子どもの目的は保育者だったり、遊びであり、他の子どもではないことが多いです。つまり、「先生と遊びたい」とか「鬼ごっこしたい」であり、「あの子と遊びたい」ではないということです。もちろんそれでいいのです。なぜなら、一人で遊ぶことを楽しんでいた子どもたちですので、いきなり「あの子と遊びたい」となる方が難しいからです。でも、「先生がいるなら、○○ちゃんと遊んでもいいよ」が続いていけば、そこから「〇〇ちゃんと遊びたい」に繋がっていきます。この連合遊びという遊びも子どもと子どもを繋ぐ大事な遊び方です。

連合遊び 3~4歳ごろ 

・他の子どもとおもちゃや道具をやりとりしながら、一緒に遊ぶが全体のまとまりがない(目的は同じ遊び)

・子ども同士の繋がりが薄く、保育者を通して子ども同士の繋がりを強めている時期

・集団で遊ぶことの始まり

 

 最後に、「協同遊び」について紹介しますね。連合遊びを続けていくと、また、他の子どもと生活を共にしていったりすると、お友達関係も次第に形成されていきます。こうなってくると、遊びをする際の目的が遊びそのものであったり、保育者と遊ぶことから、「○○ちゃんと遊ぶ」ことに移行していきます。もちろん、その遊び自体も目的になるので、「○○ちゃんと一緒に○○遊びがしたい」が達成されるとその子にとってとても有意義な時間になるわけです。つまり、協同遊びの段階になると保育者と過ごすことが第一の目的ではなくなっていくのです。また、お友達同士で遊ぶことが楽しいので、大人の介入が時に邪魔にもなります。

 加えて、協同遊びの特徴として、役割分担とリーダーの存在があげられます。「協同」するわけですので、皆で山を作ったり、ケイドロをしたりして、1つの遊びを作り上げます。その際、それぞれに役割が与えられ、それと同時にその遊びを導くリーダー的な存在の子どもが出現します。こうしたリーダーは、体が大きいとか、力が強いといった子どもがなるとは限らず、優しい子や発想が面白い子などもリーダーになります。説明は省略させていただきますが、要は「協同遊び」が行われるような時期になると、わがままで自分勝手なリーダーは他の子どもから嫌われてしまい、リーダーでなくなってしまうのです。

 さて、早いと4歳頃から協同遊びは見られるとされますが、私の感覚ではだいたい年長クラスになって少し経ったころから始まるように思えます。どちらにせよ、大人の介入が少なくても自分たちで遊び、生活していけるようになってきたのだなと感じられる場面です。

協同遊び 4歳ごろ~

・遊びの目的が保育者からお友達や遊びそのものへと移行する

・役割分担をしながら、共通の目的やルールに沿って、組織を作って遊ぶ

・グループをまとめるリーダー的な役割を担う子どもがでてくる

・保育者への依存度が低くなり、自分たちだけで遊びたい気持ちも強くなる

・協力・協同(コミュニケーション)して遊びを展開していく

 

 上記のような過程は、必ずしも子どもたちが自然に学ぶというわけではありません。保育者の働き(役割)が重要な意味をもってくるのです。

 そうした保育者の働きも興味深いところですが、様々な子どもがこの日本にもいるのに、遊びの過程においても一般的な流れがあるというのは興味深いところです。皆さんのお子さんが今どのように遊んでいるのか注意深く見てみると、お子さんの今の成長が見られるだけでなく、子どもたちのこの先の成長も見えてくるかもしれませんね。

 

 

松山東雲短期大学 保育科

講師      浅井 広