【幼稚園で育てたい子どもの姿】

【幼稚園で育てたい子どもの姿】

 皆さんこんにちは。梅雨に入り、不安定な天気が続いていますがいかがお過ごしでしょうか。私がいる愛媛県松山市は大きな山々に囲まれているため、あまり雨が降らない地域のようです。梅雨ではありますが、曇りの日が続いています。また先日は、関東につづき関西でも大きな地震がありました。南海トラフ地震や東海地震がこないかと心配しておりますが、地震には備えることしかできませんので、いつ来るかとおびえるのでなく、くることを前提にしっかりと準備をしていきたいですね。

 

 さて、今回は新しく改訂されました幼稚園教育要領について少し解説をしていきたいと思います。

 昨年の第一回目に幼稚園教育要領についてご説明させてい頂きましたが、皆さんは覚えていらっしゃいますでしょうか?幼稚園教育要領は簡単に言ってしまえば幼稚園を運営していくための教科書のようなものです。これが新しく改訂されたのです。10年おきに改訂されますので、この10年の教育や社会情勢等々を踏まえ変更した点もあれば、遊びを通しての発達環境を通しての教育のように、変わらずに大切にされている点もあります。

 

 保育に関する考え方としては大筋は変わりませんが今回の一番の変更点としては、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」として、10項目の姿があげられたことです。簡単に言いますと、幼稚園が終わるときに以下の10の姿が見られるよ、ということです。解説を加えて紹介しますと、

 

1:健康な心と体  

 健康な心と体を育て、幼稚園生活の中で充実感や満足感を持って自分のやりたいことに向かって心と体を十分に働かせながら取り組み、見通しを持って自ら健康で安全な生活を作り出していけるようになる。

2:自立心  

 身近な環境に主体的にかかわり、いろいろな活動や遊びを生み出す中で、自分の力で行うために思い巡らしなどして、自分でしなければならないことを自覚して行い、あきらめずにやり遂げることで満足感や達成感を味わいながら、自信をもって行動するようになる。

3:協同性  

 友だちとのかかわりを通して、互いの思いや考えなどを共有し、それらの実現に向けて、工夫したり、協力したりする充実感を味わいながらやり遂げるようになる。

4:道徳性・規範意識の芽生え  

 して良いことや悪いことがわかり、相手の立場に立って行動するようになり、自分の気持ちを調整し、友だちと折り合いをつけながら、決まりを守る必要性が分かり、決まりを作ったり守ったりするようになる。

5:社会生活とのかかわり  

 家族を大切にしようとする気持ちを持ちつつ、いろいろな人とかかわりながら、自分が役に立つ喜びを感じ、地域に一層の親しみを持つようになる。

 遊びや生活に必要な情報を取り入れ、情報を伝え合ったり、活用したり、情報に基づき判断しようとしたりして、情報を適切に取捨選択などして役立てながら活動するようになるとともに、公共の施設を大切に利用したりなどして、社会とのつながりの意識などが芽生えるようになる。

6:思考力の芽生え  

 身近な事象に積極的にかかわり、ものの性質や仕組みなどを感じ取ったり気づいたりする中で、思い巡らし予想したり、工夫したりなど多様なかかわりを楽しむようになるとともに、友だちなどのさまざまな考えに触れる中で、自ら判断しようとしたり考え直したりなどして、新しい考えを生み出す喜びを感じながら、自分の考えをよりよいものにするようになる。

7:自然とのかかわり・生命尊重 

 自然に触れて感動する体験を通して、自然の変化などを感じ取り、身近な事象への関心が高まりつつ、好奇心や探究心を持って思い巡らし言葉などで表しながら、自然への愛情や畏敬の念を持つようになる。身近な動植物を命あるものとして心を動かし、親しみを持って接し、いたわり大切にする気持ちを持つようになる。

8:数量・図形、文字などへの関心・感覚 

 遊びや生活の中で、数量などに親しむ体験を重ねたり、標識や文字の役割に気づいたりして、必要感からこれらを活用するようになり、数量・図形、文字などへの関心・感覚が一層高まるようになる。

9:言葉による伝え合い 

 言葉を通して、先生や友だちと心を通わせ、絵本や物語などに親しみながら、豊かな言葉や表現を身につけるとともに、思い巡らしたことなどを言葉で表現することを通して、言葉による表現を楽しむようになる。

10:豊かな感性と表現 

 みずみずしい感性を基に、生活の中で心動かす出来事に触れ、感じたことや思い巡らしたことを自分で表現したり、友だち同士で表現する過程を楽しんだりして、表現する意欲が高まるようになる。

 

 といったようなかたちです。これらの姿は到達目標ではありませんので、必ず幼稚園を修了する時にこうした姿が見られなければいけないというものではありません。これらの姿は、年長の終わりの時期に子どもたちが見せてくれる姿をまとめたもので、もちろん成長には個人差がありますし、できるときもあればできないときもあるでしょう。そのため、できているから“〇”、できないから“×”というものではないのです。あくまでも、成長の通過点だと思ってください。ただ、こうした視点を持つことで、保育者も保護者の方も子どもの育ちの目安を持つことができるかもしれません。「きっと、もうすぐこうなっていくんだろうな」と。

 また、この10の姿を小学校教育(学習指導要領)でも使用しています。つまりは、幼稚園の修了と小学校のスタートを文言的に統一させることによって、保育者と小学校教諭の子どもの育ちに対する認識を一致させる、保育で培うべき子どもの資質や能力と小学校教育で培うべき子どもの資質や能力を明確にするというねらいがあったようにも思えます。今の保育現場は、小学校教育の先取りに一生懸命で、幼児期に育てておきたい、目には見えにくい大切な育ちをおろそかにしているように思えますからね。

 

 今回書かせていただいたテーマは、皆さんにとっては “?” がたくさんの話になってしまったと今更ながら少々反省しておりますが、保育についてご理解いただきたいという気持ちで書かせていただきました。保育者の先生方はこうした子どもたちの姿が見られるよう、日々工夫を凝らしながら子どもたちと向き合っていますし、保育自体もより良いものとなるよう、時間は掛かりますが進歩しています。

 「保育についても意外と考えられているんだな」、「ただ遊んでいるだけじゃないんだ、遊びながらたくさんのことを学んでいるんだ」と感じてくだされば幸いです。

 

 

松山東雲短期大学 保育科

講師      浅井 広