『食事って大事』

 『食事って大事』
 
 皆さんこんにちは。お元気ですか?
 この時期は成績をつけたり、卒業式に向けての準備をしたり、一年間溜めた書類に向かったりで忙しく、気づけば2月も終わりということになっておりました。ホームページを更新しなければと思っていたのですが、ついつい後回しになってしまい、反省しながらの執筆となっています。。。
 
 前置きはさておき、今回は「食」についてお話したいと思います。なぜ、「食」についてお話をするかというと、けっこう子どもの「食」についてお悩みを抱えている方が多く、特に初めて子育てをされる方からはご相談を受けることもありますので、ちょっと書いてみようかなと思ったというわけです。まぁ、あまり根拠がないということでもありますが、良かったら読んでみてください。
 
 食べることは生涯にわたって続く基本的な営みですので、その基礎を培う乳幼児期の食事は大切にしたいところですよね。しかし、子どもの「食事」について考えてみると、しつけやマナーといった礼儀作法ですとか、『こ食』と呼ばれる問題、好き嫌いや食が細い等の悩みがあり、なかなか家族で「楽しく食事」を摂りたいのに、摂ることが難しいということもあるのではないでしょうか。
 
 保育ではどのように考えられているかと言いますと、『保育所における食育に関する指針』(2004年厚生労働省通知)というものに、食事を通して「お腹がすくリズムのもてる子ども」、「一緒に食べたい人がいる子ども」、「食べたいもの、好きなものが増える子ども」、「食べものを話題にする子ども」、「食事づくり、準備にかかわる子ども」を育てていきましょうと書かれています。私なりに言い換えますと、食事を通じて、「健康や生活習慣」、「人間関係」、「興味や関心」、「言葉の獲得とコミュニケーション」、「態度や姿勢」を育みましょうということになると思います。つまり、「食」という営みの中には、子どもの成長に繋がるたくさんの要素があるため、幅広く「食」を捉えましょうということだと思うのです。
 
 このことを家庭に代用して考えてみます。例えば、好き嫌いのあるお子さんがいるとします。好き嫌いということだけに焦点を当てますと、嫌いな物を省いたり、嫌いでも栄養があるために食べさせてみようと努めたり大変です。もちろん、そうした努力は大切ですし、皆さんの思いは、子どもたちにもいつか届くでしょう。でも、もう少し幅を広げて好き嫌いを捉えてみるのです。
 
 まずは発達面から考えてみます。乳歯が生えそろってくるのは、概ね3歳頃からになりますので、それまではあまり硬いものは噛み切れません。乳歯が揃っても、噛む力は大人の半分ほどだそうですので、大人にとって柔らかくても、子どもにとっては硬いなんてこともあり得ます。それから味覚ですが、人は大人になるにつれ、舌が退化していくようです。コーヒーが飲めるようになった、しそが美味しいと思えるのは、残念ながら退化しているからなのです。したがって、大人にとってちょうどよい味付けも敏感な子どもにとっては辛かったり苦かったりするのです。
 加えて、指先の運動機能も関係してきます。運動機能が未熟な生後9か月頃は手づかみで食べようとしますし、1歳半くらいではスプーンやフォークを、3歳頃にようやく自分なりにお箸を使って食べようとします。外国人の方を見ていても分かるように、お箸は慣れないと非常に使いにくい道具ですので、使いにくい道具でつかみにくい食材を食べようとすれば、食べるのを諦めたり、他の物を食べたくなったりするかもしれませんね。
 
 また、別の観点から好き嫌いを考えてみます。たまに食べる環境が異なると、意外と「食べれた!」という場面を目にします。園外保育のためお外で食べた、先生や実習生に食べさせてもらった、他の子どもたちの「食べられた人、手~上げて~」といった掛け声にノッてしまった等、色々なシーンで「嫌いだったのに食べちゃった。」ということがあります。ですので、たまには外で食べてみたり、「これ美味しい」大袈裟に言ってみたりするのも良いかもしれません。そして少しでも食べられたら、食べられたことを一緒に喜ぶとよいと思います。
 それから、自分で育てたから食べられたということもあります。ミニトマトを嫌いな子どもも多いですが、自分で数カ月間お世話をして栽培したものだから食べてみるということもありますね。一生懸命育ててみたから、食べてみたいと思うのでしょう。自分で育てていなくても、栽培者のもとに行って、作っている過程を見学することで食べてみたいと思える子どももいるようです。採れたては何でも美味しいですが、自身の体験も合わさって、美味しく思えるのかもしれません。
 それ以外にも、紙芝居や絵本等に感化されて食べてみようと思う子どももいるようです。好き嫌いに関する絵本はいくつか出版されています。良いか悪いかは分かりませんが、食べ残された食材の気持ちが代弁されていますので、それを可哀想に思って嫌いでも食べようと頑張ろうとする優しい子もいるのです。
 あとは、お手伝いという行為も関係するかもしれません。子どもにとって大人のすることの多くは魅力的なようです。そして、3、4歳くらいからはお手伝いをしたいという気持ちも大いに育ってきます。しかし、子どものお手伝いは、大人からすると時に迷惑であったり、二度手間になることも。。。「させてあげたいけど、時間がなくて」なんてこともあるのではないでしょうか。そのような時も、できればお手伝いをさせてあげてください。3歳くらいであれば野菜をちぎることもできますし、4歳くらいならば野菜の皮をむくといったこともできてくるように思えます。簡単なことで構いませんし、最悪、する必要のないことでもかまわないと思うのです。子どもにとって大事なことは、お父さんお母さんの役に立てた、自分でできたという気持ちです。そうした快の感情をもっていれば、もしかしたらお手伝い効果で嫌いなものも少し食べてみようと思うかもしれませんね。
 
 好き嫌いについて書いてきたら、ずいぶんと長くなってしまいました。この他にも食に関する問題はたくさんあるのですが、私としては共通する部分は同じではないかと思います。それは『食べたいと思うこと』だと思うのです。食べ歩きですとか、こ食についてもそうですが、食べることが楽しい、喜びであるという気持ちを育んでいくことが、食に関する問題を解決することに繋がってくると思います。
 楽しく、美味しく、いっぱい食べて、元気に育ってほしいものですね。
 
 
 
松山東雲短期大学 保育科
講師      浅井 広