「伸び伸び!」

 「伸び伸び!」
 
 新年あけましておめでとうございます。
 昨年は、ご拝読いただき誠にありがとうございました。本年も皆様が「子育てや保育っておもしろい」と感じてくださるような内容を頑張って書いて参りたいと思いますので、どうぞよろしくお願い致します。
 
 さて、皆様はこのお正月をいかがお過ごしになられましたでしょうか?ご実家に帰省された方、旦那さまや奥様のご実家に帰省された方、ご旅行を楽しまれた方、ご自宅でゆったりと過ごされた方、様々な過ごし方をされたと思います。私は久しぶりに岡崎に戻り、のんびりと過ごしておりましたが、そんな折、愛隣幼稚園をネットで検索する機会がありました。今の世の中、便利と言いますか、恐ろしいと言いますか、愛隣幼稚園を検索すると園の評価まで出てくるのですね。どなたがお書きくださったかは存じ上げませんが、園のご感想をお書きくださっておりました。
 
 私が見た評価は3名の方が以前に書かれていたものでしたが、その中に「のびのびした」という記述がありました。確かに愛隣幼稚園には、体操や音楽、英語や平仮名等を特別に扱う時間がなく、そうした学習は子どもが遊びの中で自主的に学んでいけるような保育を目指しているので、子どもたちは制限されている感が薄く「伸び伸び」しやすいかもしれませんね。また、子どもたちがしたいことをできるだけ制限が少ない中で、お友だちや先生たちと一緒にできることが許されていることも、子どもたちが「伸び伸び」できる要因かもしれません。
 
 では、「伸び伸び」とはそもそもどういうことなのでしょうか?子どもたちも大人も「伸び伸び」していた方が当然良いですよね。様々な制限を受けて辛そうな人よりも、自由で開放的に見える人のほうが一般的には魅力的に見えるわけです。だとすれば、幼稚園で「伸び伸び」しているということはどういうことなのでしょうか、ネットを見ていてこの「伸び伸び」と言うフレーズにピンっと来てしまったので、本年1発目は「伸び伸び」についてお話させていただきたいと思います。
 
 保育において「伸び伸び」することについては、「健康」という分野で考えられています。健康というのは、体が健やかであることに加え、心(精神面)や社会面においても充実した状態のことを指していますが、保育ではより具体的に健康ということを考えて、食育や生活習慣、安全管理なども健康の一部として考えられています。その健康の中に、今回のキーワードである「伸び伸び」ということも含まれています。
 
 保育における健康面の目標の一つに、『明るく伸び伸びと行動し,充実感を味わう。』という目標があるのですが(詳しくは幼稚園教育要領を見てください)、ここに「伸び伸び」という記述があります。つまり、子どもたちが明るく伸び伸びと生活することは、幼稚園の目標のひとつなのです。
 
 もう少し詳しく説明しますと、子どもが『明るく伸び伸び』している様子というのは,単に子どもたちが活発に活動している姿を意味しているだけではありません。その姿の奥には、幼稚園生活の中で解放感を感じつつ,能動的に人や物、自然といった環境とかかわり,自己を表出しながら生きる喜びを味わうという内面的な充実があるのです。そして、それらが自己充実に深くかかわっています。言い換えれば、「伸び伸び」している子どもというのは、心身共に安定していて、自己を十分に発揮して伸び伸びと行動することを通して充実感や満足感を感じているような子どもと言えると思います。
 
 さらに言いますと、「伸び伸び」するためには、まず人間関係が安定していることが大切になってきます。つまり、自分が他者から認められ、他者と良好な関係性が築かれていないと「伸び伸び」は難しいのです。皆さんも、誰かと喧嘩して嫌な気持ちになっている時や、相手に認めてもらえない時に「伸び伸び」するのは難しいですよね。「誰かと」や「相手」というのは、保育では、お友だちや保護者、先生がメインになるわけですが、そうした自分以外の人から認められて、自分らしく生活できないと「伸び伸び」することも難しくなってきます。
 
 そうした人間関係の中で、心も体も安定し、自分がしたいことを存分に行え、充実感や満足感を感じられていると『明るく伸び伸び』と子どもがしているように見えるということなのです。
 ですので、「伸び伸び」と評価していただいたということは、愛隣幼稚園には上述させていただいたような子どもたちがいたのであろうということなのです。こうした姿がたくさん見られるということは、たくさんの遊びをしているということであると思いますので、そうした遊びの中で、知識や技能の獲得、身体機能・コミュニケーションスキルや社会性・主体性・責任感・表現力・言語能力等の向上、自己肯定感や満足感等を得られるようになると考えられます。要は子どもの成長にとって大切なことがいっぱい経験できるということですね。
 
 とはいえ、子どもたちの様子は日々変化しますし、人間いつでも健康で「明るく伸び伸び」いられるわけではありませんので、こうした姿がたくさん見られるよう大人が配慮していくことも必要になるでしょう。しかも、子どもたちは一人ひとり違いますので、その子にあった自己充実感を得られるようにしていくことも大切です。それはとても難しいことだと思いますが、子どものために、子どもが『明るく伸び伸び』できるようしてあげたいものですね。
 
 
松山東雲短期大学 保育科
講師      浅井 広