赤ちゃんは何故カワイイの?

 赤ちゃんは何故カワイイの?
 
 皆さんこんにちは。
 月日が経つのは早いもので、もう11月。今年も残り1カ月ちょっととなりましたね。「今年も慌ただしく終わってしまったな~」と感じる今日この頃ですが、残り僅かな2017年を楽しんでいきたいなと思っています。
 
 さて、話は変わりますが皆さんは赤ちゃんを見たら「かわいいな」と思いますか?子どもが好きな方は無条件にかわいいと思うかもしれませんし、子どもが苦手という方も赤ちゃんの見た目はかわいいと思うかもしれませんね。人の赤ちゃんでなくても、犬や猫をはじめとした多くの動物の赤ちゃんも、とてもかわいらしいですよね。撫でてあげたり、ミルクをあげたり、いっぱいお世話をしてあげたくなってしまいます。
 
 でも、何故、赤ちゃんを「かわいい」と思うのでしょうか?そこには理由があるはずです。大人に「かわいい」と感じさせる、赤ちゃんならではの特徴が・・・。
 ということで、ローレンツという人が赤ちゃんを可愛いと思う理由を調べました。その結果として「ベビースキーマ」という発見をしたのです。
 「ベビースキーマ」とは、
 1.体に比べて頭が大きい
 2.額が広くて、丸く盛り上がっている
 3.目が大きく、頭の下の方にある
 4.頬がぷっくりと膨れている
 5.手足が短く、むっくりしていて、動きがぎこちない
 6.体全体が丸みを帯びている
 といったような特徴を指しています。こうした特徴を含んだものを見ると、私たちの脳は「かわいい」と判断するそうです。確かに、赤ちゃんやお人形を想像すると分かりやすいですかね。
 この研究は発達心理学や脳科学等によって分かってきたようなのですが、赤ちゃんをかわいいと思うのにもちゃんと理由があったんですね。まぁ、こういうことが分かってきて、きっとアニメやお人形にも取り入れられてきているんでしょうね。詳しくは分かりませんが、ヘアメイクにも活用されているみたいです。
 
 それはそうと、赤ちゃんが可愛い理由がわかったとしても、何故そのように生まれてくるのかということが問題です。体が大人の状態で生まれてくるのは、お母さんが苦しくなってしまうので問題なのですが、別に顔が大人の状態で生まれてきても支障はないはずです。あまり想像したくありませんが、赤ちゃんの顔がリアルなおっさんでも別に生命とは関係ないように思えます。でも嫌ですね。
 
 ということで、発達心理学では赤ちゃんがかわいい理由をこのように考えました。「大人に養育してもらうため」と。つまり、人の赤ちゃんがかわいく生まれてくるのは、養育者である保護者にかまってもらい、自らの命を守るためだと。
お腹がすいた、おむつを替えてほしい、かまってほしい等の色々な要求があるのですが、人の赤ちゃんはそれらを自分で行うことができません。大人が世話をしなければ死んでしまいます。他の大型哺乳類は産後間もなくして自身で歩行し、母親のミルクを飲みにいけるのですが、人の赤ちゃんはそれができません。人の赤ちゃんは他の哺乳類に比べ、様々な点で未熟な形で生まれてくるのです。このことをポルトマンという人が「生理的早産」と名付けました。
 
 このように考えるとつじつまが合うようにも思えます。人は何らかの理由で他の大型の哺乳類に比べ、未熟な形で生まれてきます。そのため、保護者の養育が不可欠であったのです。そこで保護者の養育を受けるためには、保護者を魅了する特徴が必要であり、それが「かわいさ」なのです。
 

 「んー、なるほど!」と思いますが、それじゃあ、「他の哺乳類の赤ちゃんがかわいいのは何故?」とも思います。私はその理由を知りませんが、他にも赤ちゃんと保護者の養育を結び付ける、人の発達に関する研究はいくつかあります。
例えば、人の赤ちゃんの視力は悪いと言われていますが、ある一定の距離においては見えているとされています。その距離というのが、授乳をする時の母親の顔と赤ちゃんの顔の距離だというのです。したがって、視力が弱い中でも、母親の顔をぼんやりと認識しているようなのです。また、若い女性は男性や閉経後の女性よりも、赤ちゃんのかわいさに鋭敏であるようですし、男性よりも女性の方が赤ちゃんの泣き声に敏感だそうです。きっとこれらも母性本能なのでしょう。

 つまり、人は養育したいと思い、養育されるための装置を長い歴史の中で獲得してきたということだと思います。そして、保育においては、こうした保護者と赤ちゃんの「養育する―養育される」関係が基本的信頼関係として非常に重視されています。なぜなら、人は信頼できる人を安全基地として、そこから人間関係を広げていくと考えているからです。言い換えれば、保護者を安全基地として、おじいちゃん、おばあちゃんや他の子どもや大人等との関係性を築いていくのです。したがって、この基本的信頼関係というのは、子どもたちにとって、今後の人生で必要な人間関係を広げていくための基盤となる重要な関係性と捉えられるのです。もちろん基本的信頼関係は、子どもに成長してからも新たに築くことができますし、継続させていくこともしていかなければなりませんが。

 
 こうしてみると「人」という生き物はあえて早産で産むことによって、「育てる時間」を長くし、本来持っている力以上のものを育むことを願った生き物だと思えてきます。それが人の遺伝子として受け継がれているのでしょう。実際に、98%以上遺伝子が一致しているとされる、最も人間に近い生き物のチンパンジーの赤ちゃんも2歳ごろまでは人間と同様の成長をしていきます。言葉だって使えるようになります。なので、チンパンジーの子どもと人間が、道具や手話を使って会話をすることも可能です。しかし、チンパンジーの赤ちゃんと人の赤ちゃんは、2歳以降は大きな変化が生まれてきます。いくらチンパンジーの赤ちゃんを育てても、人にはなれなかったのです。逆に言えば、「育てること」それが「人らしさ」なのかもしれません。
 
 まとまりのない話になってしまいましたが、結論的には「赤ちゃんはかわいい!!」。それで十分な気がします。我が子をいつまでも「かわいい」、「大切にしたい」と思いかかわり続けることが、保護者にとって最も大切なことなのかもしれませんね。
 
松山東雲短期大学 保育科
講師      浅井 広