【幼稚園教育の基本?】②

 本来ならば【幼稚園教育の基本】①でお話したかった内容なのですが、ついつい長くなってしまったので、改めて「環境を通して行う保育」についてお話したいと思います。

 お話を進めていく前に、まずは保育でいう「環境」について説明をしておかなければなりませんので、簡単に説明したいと思います。

 一般的に「環境」というと、周囲を取り巻く状況や物、社会等のことを指しますよね。保育においても様々な意味で「環境」と使われますが、よく使われる意味としては物や人、自然等があげられます。

【物】は三輪車やハサミ、机、園舎等あらゆる物が含まれます。

【人】はお友だちや家族、保育者、地域の人たち等になります。

【自然】は植物や昆虫、動物、水、光、風等が当てはまります。

 保育においては、こうした様々な環境と子どもがかかわる中で、様々な経験をし、自ら学んで育っていくことを大切にしています。ここで、学んでと書きましたが、何も「勉強しろ」と言っているわけではありません。勉強というのは、その多くがある種の情報を記憶し、それを活用する力を身に付けることであると思います。例えば国語や算数等は、ひらがなや漢字、数字等を記憶し、それを使って思いを伝えたり、計算をしたりするわけです。これらは、私たちが生きやすくするために必要不可欠なツールの一部でしょうし、先人たちの知恵の賜物とも言えるでしょう。そのため、勉強をすることは、人が社会の中で生きていくためには必要なことです。

 しかし、保育における学びは勉強とは異なります。お友だちを「大好き」と思うことやお友だちとけんかをしてしまって「悲しい」という気持ちを抱くこと、または、自然を見て「キレイだな」と感じたり、動物を飼って「可愛い」と思ったり、時に命の尊さを感じたりすること等、人として生きていくために最も大切なことの基礎を培っていくことが学びという言葉で表現されています。もちろん、一人でトイレに行けるようになったことを誇らしいと感じたり、お友だちとご飯を食べて美味しいと感じたりすることもそうです。トイレに行けるようになったこともそうですが、「僕だって一人でできるんだぞ!」と感じられることが大切なんですね。

 「でも、ひらがなや数字は教えなくても良いの?」と感じておられる方もいらっしゃるかもしれません。保育において大切にされていることは、ひらがなや数字を覚えて読み書きができるようになったり、計算ができるようになることではありません。

 では何が大切にされているのでしょうか?

 それは、言葉を使ってお友だちに思いを伝えられる喜びや、ひらがなを使うとお友だちにお手紙が書けると気づき、お手紙を書いてみたいと思うこと、数字を使うと時計がよめるようになったり、お店屋さんごっこでお買い物ができるようになったりすること等、言葉や数字を「使ってみたい」と思う気持ちをたくさん経験することなのです。たくさん経験した子どもたちの多くは、大人が教え込まなくても言葉や数字を使おうとします。だって、やりたいのですから。だから園では「僕の名前どうやって書くの?」と子どもが先生に尋ねたり、お店屋さんごっこで「100000円」札が飛び交ったりするわけですね。もちろん子どもですから、大人のように巧みに言葉や数字を使えるわけではありません。【幼稚園教育の基本?】①でもお話させていただきましたが、人には成長の段階があります。言葉や数字を正しく使う前に、使う喜びを味わうという段階があるのです。大人が焦ってそこを抜かしてしまうと、育っていくにつれて、言葉を書く喜びや数字の面白さを見失ってしまうことになるのかもしれません。

 大人が焦らずとも、子どもたちはこの後、小学校で正しい使い方を習います。国も幼稚園や保育園、認定こども園と小学校の接続をしっかりと考えているので、小学生になったら小学生の学びをしていけば良いのです。それならば、幼稚園の時は言葉って楽しい、数字って面白いと感じられる気持ちを育んだ方が、子どもたちにとって幸せだと思いませんか。

 運動や絵画、音楽等も同様です。保育では子どもたちの「やりたい」と思う気持ちを育てることが大切にされています。保育では子どもの「やりたい」を実現できる環境を整えて、困った時は先生も一緒に考え、上手く行った時は共に喜んで共感し、子どもの心を育てていっています。

 

 またまた長くなってしまいましが、保育ではあらゆる【環境】と子どもがかかわり、経験し、学ぶことが大切にされています。言うのは簡単なのですが、実践するのは難しいんですけどね。「○○を用意したんだけど、子どもたちが全然興味を持たなかった」なんていう先生の話はよく耳にします。保育も子育てもなかなか思い通りにはいかないんでしょうね。

 かたい話が続きましたので、次回はかわいらしい子どもたちの話と私が住んでいる愛媛県の紹介したいと思います。

 よろしければ、また見てみてください。

 ありがとうございました。

  

 松山東雲短期大学保育科

 講師     浅井 広