【生き物とどうかかわろうか?】

 【生き物とどうかかわろうか?】

 

 皆さん、こんにちは。

 だんだんと暑い日が増えてまいりましたが、いかがお過ごしでしょうか。

 

 新学期になって1,2カ月が経過しようとしてますが、お子さんの様子はいかがですか?幼稚園生活に慣れ始めたお子さんもいれば、ママやパパと離れたくないというお子さんもいらっしゃると思います。

 それぞれにお子さんの気持ちや成長がありますが、私からすればどのお子さんもこの数カ月で成長された部分があると思います。保育参観の際にも少しお話しさせていただきましたが、年長さんは道具を使った活動が活発になってきましたし、年中さんは自分というものが出て来るようになってきました。毎日の少しの積み重ねが、いずれ大きな成長へと繋がっていきます。ですので、その毎日を大切にしていきたいと考えています。

 

 さて、今回はそんな積み重ねの中でも、「生き物とのかかわり」に注目してみたいと思います。「生き物」とのかかわりと言うと、その生き物を調べたり飼育をしたりという技術、知識的なものと、命を大切にするという情緒的なものが考えられます。もちろん、これらを完全に二分することは難しく、命を大切にするから正しい飼育方法で飼育しようとするわけですし、正しい飼育方法で飼育することで命が守られるわけですが、その前段階として子どもたちが生き物とどうかかわっているかについて考えてみたいと思います。

 

 多くの子どもたちは生き物が好きですね。犬や猫などの可愛らしい生き物も好きですし、昆虫や恐竜といった図鑑でしか見たことのない生き物も「かっこいい」と大人気です。残念ながら逆に「気持ち悪い」という生き物もいます。でも、それらは見た目を対象としてかわいい、かっこいいことが多く、命という認識とは少しずれているかもしれません。

 例えばちょうちょやアリ、ダンゴムシ、毛虫などの生き物は子どもたちが良くかかわる生き物で子どもたちも大好きです。ですが、捕まえ方がなかなか過激だったりもします。強く握ったり、頭を捕まえてみたりは当たり前ですし、アリを捕まえるときに3歳くらいの幼い子は一度叩いて瀕死状態にして捕まえたりもします。大人からすればとても残酷でハッとすることも多々ありますが、子どもにとってはある意味当たり前のことであったりします。

 でもよくよく考えてみるとそんな捕まえ方も、「捕獲する」という目的を達成するためには非常に理にかなった方法でもあります。

 

 しかし、そのような方法は年中さんぐらいになると他の子どもたちから否定されてしまいます。大人にはその前から「もう少し優しく触ろうね」なんて言われていますが、お友だちに「いけないんだよ」「かわいそうだよ」と言われるとちょっとドキッとするのかもしれません。そうして、次第に生き物の捕まえ方も変わっていくことが多いように感じます。そうはいっても急に優しく捕まえることは難しいですね。なぜなら、「確実に捕まえる」と「優しく捕まえる」は子どもの中では相反する面があるからです。つまり、「確実に捕まえるために強く握る」は当然のことなので、そこから抜け出すにも経験が必要なのです。

 

 では、年少さんの時に「いけないんだよ」と言われてもできなかった子どもたちが、どうして捕まえ方を変えようと思うのでしょうか。

 

 実際のところ詳しいことは私にも分かりませんが、自分以外の立場を想像できるようになるというのも1つの要因かと思います。

 叩かれて辛かった経験や迷子になってご家族と離れ不安になった経験などなど、自分のいろいろな経験が3歳や4歳の時に「いけないんだよ」と言われた言葉と結びつき、アリや虫の立場に立てるようになるのではないでしょうか。そうすると優しく捕まえてあげようとか、捕まえてもお家に返してあげようということを、言われてするのでなく自分で考えて行動できるようになるのではないかと思うわけです。

 

 そしてさらに大きくなって年長さんになると、生き物が快適に生きられる環境を管理し、愛着をもってかかわりたいと思うのではないでしょうか。その中で、その生き物がどのような食べ物を好むのか、どのような環境下で生きているのか、どのような種類がいるのかといった知識や飼育方法を学ぶのだと思います。そして、大事に飼育することで生き物に対する愛情が増し、他の生き物に対してもやがて慈しみや畏れを抱くのかもしれません。

 

 あくまでも私見でありますし、幼い子どもでも生き物の好き嫌いはあります。またご家庭で生き物を飼育されている方とそうでない方によっても、お子さんの生き物のかかわり方は変わると思います。また、子どもたちは周りに影響されやすいですので、皆がかわいいと言って可愛がると自分もそうしたくなったりもしますね。とっても柔軟なのです。

 

 今、年長さんが亀に餌をあげてくれています。子どもたちにとってはとても大きい亀です。大人が持っても重いです。初めはその大きさに「キャーキャー」言って怖がる子もいましたが、亀かわいい派の子もいたりして、餌をあげ始めて1週間ほどすると男の子も女の子も「かわいい」と言って餌やりをとても楽しみにしています。

 

 子どもの育ちは色々な要素が絡みあっていて、「絶対にこうなる!」というのがないのでどう育つかを予測するのはとても難しいですね。でも、年長さんのような生き物を大切にしようとする姿は、急に「やりなさい」と大人が言ってもできるものではありません。年少さんやその前からの積み重ねが年長さんになって目に見える形となって表れているのです。

 

 生き物だけでなくどのようなことも同じかもしれません。大人が「難しいだろうなぁ」「またやるだろうなぁ」と感じても伝え続けたことと、子どもたちの成長の時期が合致したとき、ようやく目に見える形で結果が表れるのではないでしょうか。

 子どもたちの成長は楽しみ、でもそんなに急いで育たなくてもいい、そんな気持ちで子どもたちとかかわっていきたいですね。

 

 愛隣幼稚園 

 浅井 広